yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(6)

ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(6)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikku.com/ 
第四章 剣闘士

第四章 剣闘士■第4章(6)
 その日、空は天頂まで晴れ上がっていた。大きな音が響いていた。大阪湾上に花火が打ち上げられているのだ。剣闘士大会の会場が、ロセンデール卿の持船「ライオン」の飛行甲板上に設けられていた。
 静寂の中、突然に法螺貝が鳴り響いた。
 空母「ライオン」甲板の六ヵ所に設けられた入場口から、各々の武術のロボットが一団となって入場してきた。各々のロボットの背中には、西日本連合の各市の旗が掲げられている。
 健闘士大会で優勝したロボットの持主の旗が、空母ライオンの艦橋の上にへんぽんと翻るのだ。
 この武術試合には、BGMとして、日本古来の音楽がデザインされ、使用されている。ロック調に編曲された日本古音楽にのって、次々と剣闘士ロボットが出現して来る。空母ライオンの甲板上に設けられた客席にいる、観客が手を叩き続ける。もちろん観客は、すべて人間である。
 当然ながら、どの剣士が入賞するかの賭けも行われている。客席のあちこちから、各都市の市章応援旗が打ち振られている。ロボットとはいえ、各都市を代表しているので、各都市ではテレビから流れる映像に釘づけになっている人達が多くいた。
 艦橋に設けられた挨拶台に、一人の男の姿があった。西日本都市連合議長、水野英四郎である。挨拶を始めた。
「ヨーロッパから来航されたロセンデール卿のご招待を受け、急遽このライオン号にて御前試合を開催するに至りました。
 まず、卿に感謝の拍手をお願いいたす」
 西日本都市連合の人々は頭を垂れた。
 ロセンデールは軽く目礼を返す。水野は挨拶を続ける。
「この剣闘士御前試合も迎えるところ二十回となり、日本精神の華ともいえる、日本武道を見せる世界でも稀なロボット剣闘士大会となっております。
 西日本エリアの各市を代表する参加ロボット諸君はもちろんのこと、西日本における有名企業の皆様の絶大なご協力に感謝する次第であります。
 今回より、ロセンデール卿のご好意により、この試合の様子は西日本、東日本は及ばず、全世界に放送され、日本の武道文化を知らしめるに大いに役立つでありましょう」
 ライオンの係留されている大阪港の波止場あたりにも、観戦希望客が詰め掛けていた。埠頭近くに民間企業による特設会場が設けられ、何とか空母上を見ることができた。空母ライオン上の会場では、続いて各市を代表する武闘ロボットが紹介されていく。
     ◆
 飛行船「飛天」で、東京から飛行し、ほぼ名古屋あたりを通過している鉄は、この健闘士大会の中継番組を、機械茶を飲みながら見ていた。
「こりゃ、主水のだんなが出場すりゃ、皆いちころだがね」
 独りごちた一瞬後、テレビ画面に主水の顔が写し出される。茶を吹き出す。
「ありゃ、いけねえ、本当にだんなだ。マリアあねさん、大変ですぜ。だんなだよ、だんなが西日本の剣士として登場していまさあ」「本当ですねえ。主水め、何しているの。人が心配しているというのに」
 マリアがテレビの画面を眺める。主水の姿が写っている画面の映像スーパーには、『大黒屋所属・松前闘司郎』となっていた。
     ◆
 剣闘士の試合が始まる。
 主水の習練の技は、西日本エリアの剣闘士の比ではなかった。
 次々と勝ち進んで行く主水であった。
(続く)
ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(6)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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