yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ロボサムライ駆ける■第五章 機械城(3)(4)

■ロボサムライ駆ける■■第五章 機械城(3)(4)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第五章 機械城(3)(4)
  (3)
 叫んだ主水はまわりの地下洞をみわたす。地平は見えず、あたりは霞が漂っている。ようく、見渡してみた。急に光が射したようであった。
 主水の周囲の壁には、石仏が数限りなく並んでいた。いやその石仏は、霞たなびく地平のはてまで続いているようであった。その数は数万、いや数百万もあるように思われた。「ここは…一体」
 主水は思わず独りごちた。
『化野(あだしの)じゃよ。よくこられたのう、主水よ』レイモンの声が響いていた。
 が、レイモンの姿は見えない。
「レイモン様、いずこにおわします」
『何をキョロキョロしておる、主水』レイモンの声が再び響く。
 主水は温度探査モードに、眼を切り替える。が、温感を感じるものは何もないのだ。
 無機体のみが、主水のまわり数キロを取り囲んでいる。レイモンの声だけが主水に届いているのだ。
『主水、わしがお前をたすけたのがわかったか』
「レイモンさまが、私を…」
『なにじゃ、わかっておらなんだか。あれほどたやすく大仏を倒せたと思うか』ありありと失望の色が声に現れていた。とすれば、先刻の空母での声も、レイモンに違いないと主水は思った。
「どのようにして、おたすけくださったのですか」
『この化野の力よ、化野の霊気により、大仏を生身にしたのじゃ』
「レイモン様」
 レイモンをともかく助けねばならないと考える主水である。
『主水、わしを探す前に、空母へ戻れ』
 レイモンは冷たく言い放つ。
「そう申されましても」
『命令じゃ、空母の方が急ぐのじゃ』
 大仏ロボットを倒した主水は、ジャンプしてその地下洞穴からはい出る。
 空母ライオンの方を、望遠ズームモードで見てみる。
 空母の艦橋から火の手が上がっていた。
 その時、走り寄ってくる影が二つあることに気付く。身構えるが
「主水のおじさん」
 知恵だった。
「先刻はどうも済まぬ。が、知恵、あの剣ムラマサはどうやって取り戻したのじゃ」
「それは、私から答えましょう」
 見知らぬ一人のロボットが続いて知恵のそばにきていた。白髪頭のにこやかな穏やかな顔たちをしている。
「こちらの御仁は…」
 主水は見知らぬロボットを見る。
「自己紹介いたします。私は西日本の奴隷ロボット解放の運動の指導者、山本一貫です。以後、お見知りおきを」
 深々と山本は頭を下げた。
「山本殿がこの刀を」
「はい、この知恵に命じ、やつらの武器倉庫から手に入れたものです」
「かたじけない、お礼を申し上げる。それで知恵は解放運動の……」
「そうでござる。それで早乙女様、我々お願いの儀がござる」
「はい、いかような」
「既にご覧のとおり西日本においては、我々ロボットは奴隷制の下、人間のくびきの下におかれております。我々は東日本のような自由な世界に生きとうございます。それゆえ、ロボット解放運動を進めております。このことわかっていただいて、我々にご協力を賜りたい」
「協力とは、一体どのような。小生とて、現在、剣闘士の身分。自由でありません」
「相談でござる。恐らく早乙女殿のお手前をみて、西日本都市連合はある提案をするでありましょう。それをお受けください」
「提案ですと…、そうとはいえ」
 そのとき、空母上でひとしきり大きな音が響いた。
「早乙女殿、空母上にお助け下されい。我々の仲間、力士ロボットがロセンデール側の聖騎士団相手に闘っておりますれば」
 一貫が頼んだ。
「聖騎士団を相手に…」
 その時、主水の頭の中にある考えがひらめいていた。
「一貫どの、早速参りましょう」

   (4)
 主水は愛剣ムラマサを片手に空母へとひた走る。反乱ロボットの中である一群を見ている。それは力士ロボットである。空母甲板のうえ、主水は大音声でいいきかす。
「力士ロボットの皆様、申し上げる。拙者、早乙女主水でござる。左舷側に集まっていたたけぬか」
 先刻の剣闘士試合で大樹山を屠った主水だから、力士ロボットはいうことを聴く。
「早乙女様、集まりましたぞ。後はいかように」
「しこを踏んで下されい」
「しこですと、聞き間違いでは…」
 力士たちは戸惑いを隠せない。
「さよう、しこです」
 念を押した。
「ご命令とあらば」
 首をかしげながら、力士ロボットが一斉に、しこを踏んだ。
 パランスが崩れている空母ライオンは、甲板上のロボット力士のしこの振動で、左舷側に重さが集中してくる。
 続いて、舷側まで走り、主水は海面に向かって叫んでいた。
「サイ魚法師、私だ。主水だ。お主たちが海中におるのはわかっておる。助けを所望じゃ」 ぐらぐらと振動する空母ライオンの横に、小型の潜水艦が浮上する。サイ魚法師の新しい潜水艦だった。
「やはりおったか、法師。同じロボット同志、ここは助けてくれぬか」
「おう、生きておったか、主水。申しで断る、と言いたいところだが、先日ロセンデールから追い出されたわしじゃ。それゆえ、意趣返しじゃ。主水、協力してやろう」
 サイ魚法師はつるりと顔をなで笑った。
「かたじけない、さすがはその名も高いサイ魚法師じゃ、有り難い」
「おい、主水、褒めるのもいいかげんにいたせ。早くしないとシュトルフの聖騎士団がやってこようぞ」
「わかった。右舷側からサイ魚の攻撃をお願いもうそう」
「あい、わかった。まっておれ。特製のサイ魚軍団攻撃を加えてやるわ」
 サイ魚法師の潜水艦の後には数万匹のサイ魚の群れがひしめいている。
「ライオン」の右舷に水しぶきがあがる。
 サイ魚の大群が魚雷のように空母を攻撃しはじめた。このサイ魚は鉄を食う魚である。 バイオ空母「ライオン」の船底は食い尽くされる。バイオ空母だけに、鑑底は柔らかいのだ。加えて力士ロボットの働きぶりである。ライオンは沈み始めた。
「ロセンデール卿、ロセンデール卿はどこだ」主水は叫んでいた。艦橋のラダーを駆け上がっていた。
「ロセンデール卿降りてこい。勝負じゃ」
 そのとき、急速に降下してくるバイオコプターが一機ある。
「いかん、逃げろ」
 主水は、反乱ロボットに向かい叫ぶ。
 何体かの力士ロボットが被弾し、数体倒れる。バイオコプターからの一連射が甲板上を縫った。
「これが私の挨拶状がわりです。主水、機械城で待っておりますぞ。ふっふっ」
 バイオコプターの窓から、ロセンデールの顔が浮かびあがって、にやりと笑った。


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