yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ロボサムライ駆ける■第六章 古代都市(1)

■ロボサムライ駆ける■■第六章 古代都市(1)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

■第六章 古代都市(1)

   (1)
 三日後、機械城の後はくすぶっていたが、早急に対応
がなされている。
「主水殿、我々に、その剣技を貸してはくださらぬか」
 水野都市連合議長は、西日本都市議事堂議長室で、主
水に対して膝を屈した。
 二人は、機械城から、助け出されたことに礼をいい、
続けて本音をしゃべっていた。
 ともかくもこの事態を収拾しなければ、ならない。
 主水にとっても、ロセンデールから、落合レイモンを
はじめ助け出さなければならない人がいるのだ。
 ここは、西日本都市連合とも手をむすんでおくのが、
得策といえた。
「無論、主水殿、剣闘士としての身分は解消する。東京
の自由なロボットととして活躍していただきたい」
 水野が汗を拭き拭き、付け加えた。
「斎藤殿、ありがとうござる、まずはどのような企てか
お聞かせ下さい。話によりましたは、非力なこのロボッ
トの私が力をお貸し致しましょう」
 少しばかりイヤミを言う主水である。
「落合レイモン殿。さらには貴殿の生みの親、足毛布博
士も、閉じ込められておる場所を、つまり、ロセンデー
ルの隠れ場所を、我々のロボ忍が発見しておる」
 斎藤が一気にしゃべり出した。
「何と。あなた方が落合レイモン様を拉致したとばかり
思っていたのですが」
「いやいや、さようなこと、同じ日本人同志ではござら
ぬか」
「して、レイモン様は」
「ロセンデールの古代都市復活プロジェクトチームに使
われておられる」
「はて、古代都市とは…」
 知らぬ言葉に主水は戸惑う。
「霊戦争のおり、日本の西日本エリアが大打撃を受けた
のはご存じであろう」
「神の衛星ボルテックスから全日本軍がレーザー攻撃を
受け、近畿地方ことごとく消滅。同時に、古来からある
神社仏閣がことごとく消滅したと聞き及びます」
「それじゃ、それが近畿新平野の地下に埋もれておるの
じゃ」
「消滅したのではなく」
「そうじゃ、ある一点に向かい、すべての霊力が集中し
た場所があるのだ」
「その場所は…」
「昔の記録にある…奈良、飛鳥のあたり。近畿新平野の
地下に巨大な空洞があることが発見されている。その場
所に古代都市があり、心柱、おはしらさまがある」
「先刻、貴公が黄金の大仏と戦った化野は、その都市へ
通ずる入り口の一つなのだ」
 水野が付け加えた。
「斎藤殿がいわれるその古代都市の中に、落合レイモン
様も足毛布博士も…」
 主水は戦うべき場所を二人から指示されているのだ。
「そうじゃ、そこにおられる。主水殿、西日本は及ばず
、東日本エリアからも、かなりの霊能師が消えておるこ
とは、知っておられよう」
「つまりは、この古代都市を復活させるためのプロジェ
クトが進んでおるわけだ」
 斎藤がいった。
「しかし、なぜ、ロセンデールに『ライオン』の回航を
許したのですか」
 主水は話を変えた。
「むむっ…」
「それは…」
 二人は言い淀んだ。
「外交的圧力という奴じゃ」
 斎藤は汗を拭き拭き答える。
「それでは、あの剣闘士大会も」
「むろん、ロセンデールが日本の戦闘力を調べるために
行った。貴公も気がついていようが、あの『ライオン』
船上に西日本エリアの主な都市の首長が招待され集まっ
ておったろう」
「そうですな、彼らはいかがされました」
「ことごとくロセンデールに連れていかれた」「連れて
いかれたですと」
「ロセンデールめが、誘拐しおったのじゃ。我々、西日
本都市連合が逆らわぬように、安全処置としてな」
「我々が表立って、古代都市の復活を妨げようものなら
、血祭りにあげるというのじゃ」「何と、卑劣漢め」
 主水の顔も怒りで真っ赤になる。
「そこで我々は、貴公に頼らざるを得ない」
「この話は、徳川の主上にも」
「むろん。が、主水殿、悪い知らせじゃ」
 悪い予感が主水の胸に走った。
「何か、東京エリアの徳川公国に起こりましたか」
「徳川公もロセンデールのところじゃ」
「徳川公もですと。まさか…」
 しばし、主水は無言となる。
 徳川公がつかまっておられるのなら、主水としては、ぜひとも戦わざるをえない。
「致し方がありますまい。戦いましょう」
 主水は決意した。
「しかと頼んだ。日本の命運はつとに貴殿の両肩にかか
っておる」
「戦力としては、西日本の反乱ロボットを使いましょう
。彼らが反乱を起こしたことにすればよい」
「なるほど、我々政府は何の責任もないことになる」
 水野が考え込む。
「が、約束していただきたいことがあります」
「何じゃ」
「もし、この計画が成功した暁にはロボット奴隷制度を
廃止していただきたい」
「そ、それは難しい問題じゃ」
 斎藤が呻く。
「我々の責任ではいかんともしがたい。政治体制の崩壊
にも繋がりかねん」
 水野が続けた。
「と、いわれると、この日本がロセンデールに支配され
ること、さらには古代都市が復活することをお望みなの
か」
 主水は二人を責め立てる。
「いや、そうではない。が、しかし…」
「しかし、どうだといわれる」
 水野はすこし考えていた。
「わかった。その問題を議会にかけることを誓おう」
「よろしい。その誓いを正式文書にしていただけるか」
 主水は念を押しておく。
「わかった」
「それが整い次第、私は出掛けましょう」
 ロボザムライ主水が部屋を立ち去った後、二人は話し
あっていた。
「あやつが、この問題を解決すれば、どのようにでもな
りましょう」
 斎藤は言った。
「そうじゃ。あやつを抹殺すればよい」
 水野がほくそ笑む。
「議長もお人が悪うございますなあ」
「貴公、我々は政治家でじゃぞ」
「ああ、そうでござりますな」
 二人の乾いた笑い声が続いた議長室に長く響いていた。
 が、ロボザムライの耳は、この話を聞き取っていた。
「ふふう、水野たち、後でほえずらかかせてやるわ」
 主水は独りごちた。まずは知恵と、山本一貫に連絡し
ようと考える主水だった。
     ◆
「主水殿、どうぞ、こちらへ。狭きところなれど」
 山本が廊下を案内して進んでいる。
「これは…、これは…」
 主水は驚いている。
 反乱ロボットの本部であった。地下道のはずれの巧妙に隠されている。内部では二十人くらいのロボットが忙しく立ち働いていた。通信設備が完備している。
「申し訳ございません。我々の本部を探ろうと、西日本都市連合は『イヤーバード』なる聴音飛行機を飛ばしております。それゆえ、我々は地下に潜らざるを得ませんでした」
「いやいや、なかなか立派な。よく短期間でここまで」
「いや、これも怪我の功名でござる。この知恵めがこの空洞を見つけたのでござる」
 知恵が頭を掻いていた。
「いやねえー、俺がさあ、いろは組にいたとき、特に地下坑道で頭から逃げようと思ったときに、この空洞を見つけたのー」
「この知恵めは、この空洞で一週間も粘っておったようです」
「そりゃそうさー。逃亡ロボットの追及は激しいからね。鞭で打たれるくらいじゃ済まないさ。特にいろは組はねー」
 知恵は頭を掻き掻き、褒められてことに対して恥じらっていた。
     ◆
 サイ魚法師は、大阪湾でロセンデールの空母ライオンを、サイ魚で沈めた後、ひたすら逃げることばかり考えていた。反乱ロボットが機械城に向かったおり、主水とはわかれていた。機械城の爆発も船上で見ていた。

現在どうなっているのか、まったくわかっていない。ロセン
デールから復讐されないためである。
 が、大阪湾海流が、法師の思うとおりには流れていない。
「法師、潜水艦が不思議な方向に引っ張られております。何か水流が変化しております」 乗組員がサイ魚法師に呼びかけた。「どちらの方向へじゃ」
「それが、陸地へと思われます」
「何ごとかあらん」
 モニターに、地下に大きな空洞が穿たれているのが見える。これは先刻まではなかったのだ。
「どうやら、海水が、地下の空洞に吸い寄せられているようです」
 サイ魚法師はしばらく腕組みをして考えていた。
「地下空洞への道に、水路がないか検索してみろ」
「わずかながら、可能性があるようです」
「が、まてよ。ひっとして、これは主水たちが地下都市を発見したのかもしれんのう。よし、その空洞への水流に乗るのじ」
「どこへまいるのでしょ」
「いわずとしれておる。古代都市にある、古代大和湖(やまとこ)じゃ。奴らが大和湖を発見したに相違ない」
 法師はほくそ笑んだ。
 古代大和湖は大昔、琵琶湖が発生する以前に、近畿地方にあったと言われている。
「これはまた一戦あるかもしれん。さらに古代の宝物が見つかるかもしれんのう。おもしろいことになったわ」
 法師は独りごちた。
(続く)

■ロボサムライ駆ける■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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