yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ガーディアンルポ03「洪水」

ガーディアンルポ03「洪水」■第1回■(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/


■第1回■

見渡す限り波だ。
水の壁は情容赦なく僕カインの方へ襲いかかってくる。
その激流の中で、僕の足はもう焼けただれた建物の屋上には届いていなかった。
放射線で焼けただれた町。
それでも僕には長く棲んでいて愛着があった。
その廃墟が海に犯されていくのを、僕はなすすべもなくただ見ているしかなかった。
海、すなわち大洪水たった。
波は、伺度となく押し寄せてきて、廃墟を踪順した。
なじみのある暗い町並は、二度と僕の目の前に現われることは、、ないだろう。
服と呼べるだろうか。
そのうす汚れた切れっぱしは、僕の体にまとわりつき、かかげて身勤きは緩慢にたってくる。
水は僕の息をとぎれきせ、言うにいわれぬ悲しみは僕の体をしびれさせていった。

アベル。彼はさっきまこむ。やっと海面に顔が出る。まわりを見渡す。
いる。何100メートル、離れているだろう。
波間に見え隠れする。
彼も海にもて遊ばれている。
僕は叫ぶこともできがたい。それはどの気力も残ってはいないのだ。
打ちこわされた何かの物体が大きな音をたてて迫り、アベルに当った。

彼は泥水の中に消えていく。
アベル、、、アベルう、、」
僕は叫ぶ。
が、、
何てことだ。運命を呪う。地球の運命も。
僕は、無意識の内に、浮かんでいる木片にしがみついた。
すさましい勢いの雨は、人間の希望をすべて押し流すように降り続き、
その暴風雨の祚はまるで銃声のように僕の耳には聞己えていた。

そう、人類を完璧に打ち倒す銃声の様に。
ショックとそれに伴う疲労のために、僕は意識を失いそうになる。
夢、それも悪夢を見ているようなのだ。
僕は夢うつつ考える。
僕と弟は、なぜ、あの放射線の熱射から肋かったのだろう。
放射線は地球のあらゆる場所に降り注ぎ、
地球の文明を根こそぎ大度たで打ち払ってしまったのだ。

が、僕カインはまどろみ始める。

(続く)
ガーディアンルポ03「洪水」(1979年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook/

ガーディアンルポ02はあとで発表します。