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山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ガーディアンルポ02「人間樹の星」第5回

ガーディアンルポ02「人間樹の星」第5回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/


■ガーディアンルポ02「人間樹の星」第5回■
■銀河辺境惑星ナーダ77。至世歴100年

 地獄船の船員は、歴戦の兵(つわもの)だ。次々と入れかわり立ちかわり鋭いつきをかけてくる。最初人間樹の間を逃げまわっていたガーディアンのヘルムは、ようやく船員の一人を倒し、レイーサーベルを手にした。
 互角に戦い始める。さらに樹園上空に飛来したフライング・キャッスルヘテレパシーを先程から送っていたが、どうやらタリスに通じたようだ。いい兆候だ。
 しかし、有翼人も戦列に加わってきた。彼らはハープに似た楽器をかき鳴らし始める。
その音に同調し人間樹がざわめく。楽器にあやつられ、近接する入間樹が、ヘルムに向かってきた。見ただけで気か遠くなる数だ。片手でレイーサーベルを使い船員達を相手にする。さらに片手でレイ・ガンを構え、盲撃ちを始める。次にはテレパシーで手近かの人間樹をあやつり、他の入間樹に対立させる。
 人間樹が動き出したので、動きがとれなくなった船員達は、有翼人の助けを借りて、空へのがれた。
「うわっ、助けてくれ」
 メモリーマン、シータは数体の人間樹に踏みつけられた。有翼人が急いで助けあげたが、虫の息だった。
 番人小屋の中で休んでいた人間樹の番人ビックは、時ならぬ楽器の音に驚いた。しかもこの音は、、。
ビックは、自分の任務を果たす時がきたと思った。これから演技力を要求されるぞ。ビッグは身をひきしめた。小屋の側の入間樹に袋をかける。昨日、有翼人からISSSN−一丸○九、すなわちグレイを植えかえるように命令された時から用意してあった袋だ。袋をかける前に入間樹の顔にふれる。完璧だ。これなら見やぶれまい。ビックは小屋へもどり、床下から箱を引きずむ出す。スイッチを入れて、言った。
「よし、行動をおこせ」
 一方、上空のフライング・キャッスルの中でも異変か起こっていた。心理分析室に監禁されていたガーデイアン、タリスが目ざめた。タリスも自らの力を発揮する時がきたのだ。
 『タリJ、起きろ、起きてくれ。助けか必要なんか』
 ヘルムのテレパシーか届く範囲にうまくフライング・キャッスルが入ってきた。ヘルムのテレパシーが、タリスに通じた。ヘルムの精神力がクリスの筋力系に大きく作用する。
大いなる力がクリスの体中にみなぎる。
 タリスは部屋のドアを体当たりで開け、側にいた有翼入の腕をへし折り、レイ・ガンを奪った。回廊にいた有翼入をレイ・ガンでなぎたかしながら、操縦室へ向かう。ヘルムのテレパシーがその位置を教えてくれるのだ。
 操縦室へ突入し、有真人に反撃の機会を与えずK数秒で全員をかたずけてしまった。部屋のドアを内側からロックした。
 ヘルムを助けるためにフライング・キャッスルを降下させようとした。
「伺をするつもりだ」
 声が部屋全体から聞こえてくる。タリでほある事に気がついた。部屋のあちこちを見渡す。どこかに弱点があるはずだ。タリスは盲めっぽぅにパネルを破壊し始めた。
「やめろ、やめてくれ」
 声は哀願した。
「頼む、やめてくれ。体を破壊するのはやめてぐれ。それは私の神経システムの中枢々のだ」
「お前は誰なのだ」
 タリスは手を止めて尋ねた。
「私はナーダ77の領主だ」
 このフライング・キャッスルがそれ自体一つの生命体だったのだ。そして領主だった。
「しばらくの間、言うことをきいてもらえるかね。そうすれば私も乱暴は働かないよ、あんたの体にはね」
「わかった。お前の思う通りにする。しばらくはお前の勝ちだ」
 声はとぎれた。
 タリスは、フライングーキャッスルをヘルムの頭上に停止させた。地上すれすれた。
スキャヅグ達、地虫は、ある入物の指令により攻撃を開始していた。地下トンネルのもちらこちらから勢いよく飛び出した。樹園の方々から火災放射罫による火が燃えあがってくる。有算入は地虫を見つけ、反撃を始める。
ヘルムは、思いきり跳躍し、フライング・キャッスルの底部にとりついた、タリスに合図をテレパシーでかくる。タリスは急速にキャッスルを上昇させた。
この任務は失敗に終わりそうだ。グレイをどうしても県つけなければとヘルムはあせった。
ヘルムは、フライング・キャッスルの底部にいるのが自分だけでないことに気がついた。
小さな子供だった。
ビックだった。ビックは何とかヘルムに助けられ、フライングキャッスルの下部ハッチから内へ人った。ハッチはタリスが開けてくれた。有翼入はあらわれなかった。タリスがフライング・キャッスルの中枢、操縦室を押さえているので、うかつに手を出せないのだ。
ヘルムは少年に尋ねた。
「お前は誰だ?」
「僕はピッタだ。人間樹の番人さ。おじさん、グレイさんを捜しにきたんだろう」
[そうだ、なぜ、それを知っている』
ヘルムはテレパシーでビックに尋ねた。
「昨日、有翼入からグレイさんを植えかえるように言われたからさ。あんなことは初めてだからね。何かあると思ったんだ」
「それじゃ、お前はグレイが今植えられている所を知っているんだな」
「そうだよヽ僕が植えたんだからね」
「すまんか、さっそくそこへ連れて行ってもら分うか」
「その前に、一つ頼みがあるんだよ」
「何だ、言ってみろ」
 ビックはポケットから小型の箱をとりだす。
「おっと、無理やり、僕の頭からその場所をテレパシーで探ろうとしてもダメだよ。そんなことをすればグレイさんは死んでしまうよ。グレイさんの足もとに爆弾を埋めてあるんだ。このスイッを押せば総て終わりさ」
「悪賢いガキだ。わかった早く言え」
「僕も地球に連れていっておくれよ」
「何、お前をか」
ヘルムはピックの姿を見まわす。
「そうだ。僕はナーダ77で小さい時から育った。たから一度も地球を昆た事が々い。地球の事はグレイさんから色々聞いた。行ってみたいんだ。お願い、連れて行って分くれよ」
「わかった。連れていってやる。早く、グレイの居場所を教えてくれ。火がまわってくるぞ」
「本当に、地球に連れていってくれるんだね。まちがいないね」
「ああ、たから早く教えてくれ」
フライング・キャッスルの窓からピッタは指さした。
「あすこだよ。あそこにみえるあの番人小屋の近くだよ。早く、このフーライング・キャッスルを偏に降ろしてよ」
フライン″キャッスルは番人小屋の真上で静止した。タリスも操縦室から出てきて、三人でフライング・キャッスルから飛び降りた。
小屋の横に袋に包まれている人間樹があった。ビックはそれを示した。
「これた。これがグレイさんだ」
ヘルムは袋を破き、グレイの顔を確かめる。テレパシーで呼びかけるか、返事はない。
「どうやら、グレイのようだな。しかし心は閉じられている」
「よし、さっそく、フライング・キャッスルヘもどろう」
フラインダ・キャッスルはもう彼らの自由にはならなかった。領主が蘇ったのだ。それは三人を押しつぶそうとして急速に落下してきた。大地が震える。フラインキャッスルのために小屋は粉々にたたきつぶされた。さらに有翼人も飛来してきた。
『スキャッグ、助けてくれ。ここまで地下トンネルを掘ってくれ』
 ヘルムは必死でテレパシーによりスキャッグを呼ぶ。
 なんとか、スキャッグには通じた。
 フライング・キャッスルは再び大空へ舞い上り、また急激に三人の方へ落下してきた。
地面がゆれる。どうにか三人は走りつづけ逃れる。グレイの体を抱えて走るのはかなり危険だ。
[早く、スキャッグ、俺達はフライング・キャッスルに押しつぶされてしまう』
 空からは有翼人がレイ・ガンを撃ってきた。その時突然走っている前の地面が割れた。
地虫の、スキャッグが顔を出した。
「早くしろ!」
■ガーディアンルポ02「人間樹の星」第5回■(1985年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第2回●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第2回

■2
新機類、ユニコーン、ルウ502はどこまでも拡がる鉄表の上を四つの足で駆っている。
眼の前に拡がるのは鋼鉄の荒野。
いや荒野と呼ぶのさえ、不適当だろう。つるりとした冷たい鉄で被われていた。
 ルウ502の生体機能は充分に活性化していた。活発に働いている内臓機構
や機械筋肉がルウ502に快い気分を与えていた。
荒野から絆が生え出ていて、それは上空に消えている。
大球と小球を結ぶコード。がそれだ。衛星、小球に存在する生命球が、ルウ502
たち、新機類に命令を授けているのだ。まさに、天の糸である。

大球、つまり鉄の表面を疾駆するルウ502は、
『ああ、俺は生きている。駆けている』
 そんな充実感があった。

 が、ルウ502の顔にあたる空気流が急に温かくきり、かまけに生体液のすえた臭いがした。
 『うっ、この臭いは』
 その時、生命球から『ゴーストトレインが出現した』という情報が入力さ
れた。
ああ、なんという連絡なんだ。そんな連絡などなけれぱ、ルウ502はず
っと快適に走れていたのに。
 急に走るのがかっくうになる。
 ゴーストトレイン。
 この「生物的な動きをする機関車」は、あるいは幻想かもしれなかった。とい
うのは、ゴーストトレインが実際に走っている姿を見たルウ502の仲間はいない。
 とにかくそいつはレールもないこの鉄表面を自在に走り廻り、ルウ502たちの
仲間をひき殺しているという。
 前方に仲間の新機類たちが集まっているのが見えた。
ルウ502はどうやら目的地についたようだ。

 犠牲者はルウ300たった。首がへん左角度に折れ曲がり、角は抜きとられていた。腹腔が無惨に破られ、内臓機械がはみてていた。
 ゴーストトレインはルウたち斯様類をくいちぎり、内臓をくらうという。
それも情報回路が集積されている心臓部分を。
 ルウ502は身震いをした。不快感から全身の汗腺穴が収縮した。が、冷
静に観察しなければならない。
 ルウ300の赤外線アイが色相変化している。かわり果てた姿としかいい
ようがない体。
 角からコードがはみでているのも、物悲しい。
 一番大切な角。
 この角で、ルウ502達は衛星、小球にある「生命球」へ連絡をとっているのだ。
 収集した現場データをルウ502は生命球へと送った。


 しばらくして、ルウ502達全員に、生命球から命令が下った。
 『ゴーストトレインの存在を確かめよ』

 新機類たちは四方八方へ飛び出した。
ルウ502も無限に拡がる鉄表の上を、つめが生えた節足で駆ける。          ,
 二、三タロノタイム走っただろうか。平原にはまるで変化はない。

 ルウ502は急に停止する。
角が感応する。何かが存在する。
が、この鉄表上には何者も存在するはずがない事を、ルウ502は理解していた。

 何しろ、この「大球」、つまり鉄表上では、ルウ502たち新機類しか生存して
いないのだから。

 が、何かが反応していた。そいつは今、動いてはいない。
 ルウ502の数m前の鉄表が白熱していた。
 白熱部分にルウ502はゆっくりと焉ついていく。そいつは白熱部分の中から姿を見せていた。
 自分の赤外線アイがこわれたのてはないか。ルウ502はそう思った。なぜなら、そいつはルウ502とうり二つなのだ。
 が、体の中に機械が存在しない。かまけに、そいつの上には別種の醜い生物が乗っていた。
 ルウ502達断機類とはまったく異なる存在だった。こんな生命体がいる
とは信じがたい。

 醜い生合体が、ルウ502にそっくりな生命体に音を使って意志を告げていた。ルウ502はその空気振動を解析した。音はこういう意味らしい。

 『さあ、ユニコーーン、私、北の詩人と行こう。旅行しょうじゃないか。この大球をね』
どうやら、そいつは、微笑んでいるようだ。つまりルウ502に対して、友好的な態度を見せているのだ。
 驚きの連続でルウ502は一所に静止していた。

 それゆえ、急激に接近してくる別の物体に全く気づかなかった。
 一瞬、ルウ502の体は、巨大な物体にふき飛ばされていた。
 ルウ502の赤外線アイは二本の光帯を一瞬見た。
 ゴーストトレインだった。
 ルウ502の生命光が消えるのと同時に、20メートルもの体長のゴーストトレインはかま首をもたげ、愕を開け、ルウ502の腹腔を喰い破り、心臓をむしゃぶり始めた。
 ゴーストトレインの顔は、うれしそうに笑っている。
おいしいのだ。ルウ502の体が。
ゴーストトレインの先頭部に口となっていて、ぼろぼろと、ルウ502の内臓のあたる、
機械部品が転がり出てくる。

「大球」から遠く離れて存在する「小球」。その中心部に機械パネルで被われた生命
球が存在していた。
生命球はハーモナイザーの分身であり、また監視機類の元締であった。生命球は大昔、ハーモナイザによって、小球に組み込まれ、新機類を生みはぐくんできた。


生命球は、ルウ502の最後に送ってきた映像を分析していた。
なぜ、新機知しか存在しないはずの鉄表に、生命体がいたのか。
それにあの白熱は何を意味するのだろうか。
『まさか、天宮がめざめたのては』

何かが大球の中でかこっている。ハーモナイザーによって、大昔、「封印された大球」の中で。
その頃、大球と小球をつなぐ絆に,変化がおこっていた。
蘇った機械共生体「天宮」が神経糸を張りめぐらそうとしていたのだ。
生命球は、大球上の、すべての新機類を呼びだしてみた。ゴーストトレインを捜索中のはずだ。
が、どこ個体からも、応答がまったくない。
こんな事は今までになかった。生命球が始めて感じたパニックだった。
生命球は自らの体を移動し、バリヤーヘ逃げ込もうとした。
が、パリヤーは生命球を包み込むと、収斂した。
『これは、どういう事だ』
バリヤーは生命球の意図に反して作動している。すでに、天宮の「神経
糸」が小球へ侵入していた。
生命球はバリヤーにからみとられ、動けない。表面パネルが音をたて
て吹き飛び、各部位がめり込んだ。

数秒後、「生命球」は圧力に抗しきれずづフパラにはじき飛んだ。
生命球は消滅する時、信号を発する事が自分自身の存在理由であったことを
理解していた。

やがて、生命球の破片を天宮の神経糸がつかまえた。
いまや大球と小球は完全に、機械共生体の支配下にはいっていた。
それは天宮(てんきゅう)が一つの運命の道を歩み始めたことを意味した。


大球上では、醜い生合体がゴーストトレインに言った。
「おいおい、僕の乗り物を奪うんじゃないって」
「北の詩人よ。では、新しいユニコーンを再生してやろうか」


ユニットコードナンバー 16589
ユニットタイトル 北の詩人

ユニットコードナンバー 836250
ユニットタイトル 幽霊列車(ゴーストトレイン)

ユニットコードナンバー 386574
ユニットタイドル ユニコーンの旅

彼らは、機械群の共生体「天球(てんきゅう)」のイメージコーダーが作り出した創造物であった。
(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第2回●(1987年作品) 
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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