yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ガーディアンルポ02「人間樹の星」第6回 (最終回)

ガーディアンルポ02「人間樹の星」第6回 (最終回)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/


■ガーディアンルポ02「人間樹の星」第6回■
■銀河辺境惑星ナーダ77。至世歴100年

種人間グレイを抱いて、ガーディアンのヘルム、タリス、それに番人の少年ビックが地下トンネルに急いで逃げこんだ。

スキャッグ達かここまで据り進んで来たのだ。
「上はえらい騒ぎだ」
「それもこれもか前さん連のおかけさ」
 大き々音が響き、大地が揺らいだ。今入ってきた穴のあたりが地くすれを起こした。フ
フライング・キャッスルがまた降下してきたのだ。土がパラパラと皆の頭の上に落ちてくる。
「危いところだ。数メートル違ったら、俺たち平らになっていたぜ」
「さあ、これからどうする。どうやってグレイを連れて帰るかだ」

{スキャッグ、頼まれついでだ。すまないが地獄船の所まで俺達を連れていってくれ」
「ちえっ、人使いの荒いお方だな」
「この星から脱出するには、残念ながら、再び地獄船のやっかいにならねばな」
「ヘルム、覚えていてくれよ。俺はお前さん方の命の恩人なんだからね」
「わかった。わかった。か礼は後で、なんとてもするさ。頼むよ」
「わかった客人。仲間の助けを借りて大至急やるさ」
 地獄船のすぐそばに穴か開いたのはそれから2時間(コスモタイム)たった頃だ。地獄船にはバル
船長以下の船員はまだ帰ってきていないようだ,
人間樹園の方からは、大きな火の手があがっている。
「お、燃えてる。燃えてる」
スキャッグがうれしそうに言った。
「人間が焼け死んでるんだぜ。そんなにうれしいか」
「クリス、彼らは人間樹人だよ。これで彼らは緩慢な死からのがれられたんだよ」
「そうだ、それか幸せってもんだ」
ヘルムはグレイの体を見下ろし恋がら、言った。
「さあ、仕事を早くかたずけようぜ、タリス。ビック、お前はここに残ってグレイを見て
いてくれ」
 ヘルムとタリスが船のハッチヘ向かう。留守番の船員がいた。彼は二人を船長達と思い
こんだ。
「船長、大丈夫ですか。大変な事に」
 ヘルムに気づいたかすでに遅かった。レイ・サーベルを抜こうとしたが、一撃で倒され
た。
「ようし、完了だ。発進だ。この船で脱出だ」
「ビック、グレイを船の中へ運べ」
 ビックはグレイの体をそっと船へ横たえた。
急にタリスは、レイ・サーベルをビックヘ向ける。
「ビック、すまないが、船を降りてくれ」
「どうして、さっきヘルムと約束したんだ。僕を地球に連れて‘いってくれるって」
 ヘルムも冷たく言う。
「残念だな。ここでか別れだ」
 スキャッグが横から口を出す。
「タリス、ヘルム、それはあんまりだぜ。この坊やだってグレイを助けるために働いたん
だ。いいじゃないか。乗せてやれよ」
「スキャッグ、お前は命の恩人かもしれんが、黙って船から出ていってくれ。俺達はグレ
イを連れて帰るように命令されているだけだ。他の人間は残念々がら、足手まといだ」
「でも」
「うるさい。ぐずぐずするな。か礼はまたあとでだ」
ビックはしかた々くスキャッグと共に地獄船から外に出た。


ビックは、ヘルムとタリスに乗っとられた地獄船が、グレイを乗せて、飛び立って行くの
を見上げていた。
フライング・キャッスルが飛来し、追撃のために上昇しょうとした。しかしフライング・
キャッスルはゆっくり停止した。人間樹園が完全に燃えあがるのをながめているように
見えた。やがて地獄船とは別の方向へ飛び去って行く。残った有翼入もフライング・キャ
キャッスルの方へ舞い上がっていった。ナーダー77は地虫の星となったのだ。
あたりに入間樹の燃える煙が漂ってきた。ひどい臭いだ。
スキャッグが言った。

「うまくいきましたね。ガーディアン・ビック。
奴らは完全に信じきっていますよ。あの種入間がグレイだとね。
地球に辿り着いてからの奴らの行動が見ものですね」
ビッタは表層人格を、今の今まで人工的に作りあげていた、偽りのパーソナリテイをか
なぐりすてた。声色、態度が変わる。

「そうだ。彼らを監視していれば、コンタタトしてくる他のROW、つまり侵入者を突き
とめることができるから々。彼らの表層人格はかなり強固だ。君といる間、私といる間で
もすきを見せなかった。二人は完全にタリスとヘルムになりきっている。いつROWの本
隊から指令を受けるか、それを察知し々けれぱ」
「本物のグレイはどうしました」
「だいじょうぶ。安全な場所に隔離してある。後から私の船で地球へ連れて帰るよ。グレ
づには休息と治療が必要だ。それに新しい家庭が必要だ。それにME(救世主)を生じるための子供
がね。彼はかなねROWに痛めつけられていた。彼の話を聞いて私にはそれがよくわかっ
た。彼が気づかないうちに、私がかなり治療を行々ったんだ。彼と対話しながらね」
「先刻、彼らが連れていった人間樹は?」
「ああ、彼には囮になってもらう。グレイということでタリスとヘルムがこれからも守り
をかためることになるだろう。もう我々に過失は許されない。今回のグレイのようにね」

煙の中から人間が数人とびだしてきた。バル船長と船員達だ。彼らは煙で真黒になり、
地獄船が出発したのを見て怒り狂っていた。
ビックは隠し持っていたレイーガンを抜き、落ち着きはらい、全員を撃ち殺した。反撃
のひまを与えなかった。

「もう、地獄船もナーダ77に来ることは々いだろう。約束通りに、この星は君達、地虫族の支
配下となった。人間樹園も消滅した」
「その点に関して感謝しています。ビック」
「いやか互いさまさ、スキャッグ」
「しかし、ROWの擬態技術には驚きました。私もあの船にセットされていた映像を
見なければ信じられませんでしたよ。あのタリスとヘルムがROWだとはね」
クリスとヘルムのロケットの残骸から、スキャッグが拾ってきたブラッタ・ボックスに
は映像フイルムが収められていた。
その映像フイルムには驚くべき事実が写されていた。

ナーダー77への途上でロケットは攻撃され、タリスとヘルムは死亡した。
時をおき船の側壁から緑色のゲル状の生物が侵入してきた。
その生物は二つに分かれ、それそれヘルムと
タリスの死体に被いかぶさった。

しばらくして二体の生物は二人の死体から離れて起きあ
がった。始めはぼんやりした形だったが、人間の形をとり始める。数分のも、そこにはタ
リスとヘルムそっくりの男が出現した。
彼らは死体を始末し、船をナーダ77へ向けたのだ。
それからコッタピット内で彼らは眠りに着いた。人間のパーソナリティを学習するのには
時間がかかるのだ。
 船が爆発したのは、医療チューブでタリスの体が入間でないと感知されたからだ。自動
的に自爆装置か働いたのだ。

スキャッグはビックに言った。
「これでスリーパーとしてのあなたの役目は終了しましたね」
「そりだ・今までの協力を感謝するよ」
ビックはヘルムとタリスのすぐ後で地球を出発したのだ。

ビックの事はガーディアンの内部でもあまり知られてい々い。

彼はタイム・ジャンプを行ない過去へ瀕り、赤ん功の姿
に変身して地獄船にわざとつかまった・昭対聯がらナーダ77K来ていたのだ・今のビック
の姿は十才の子供なのだが、すでにもう数百歳になっている。ビックは「長命族」で「最上級ガ
ーディアン」に属している。

いつまで、俺は戦い続けることができるだろう。新生人類は果たしてROWに打ち勝つ
ことができるだろうか。
ビッタは自問自答する。
俺はしかし、新生人類のため、自らの生存のためにもどうしても戦い続けなければならぬ。

ナーダ77の薄紫色の空を見上げながら、最上級ガーディアン、ビッグは思った。

(ガーディアンルポ02完)

■ガーディアンルポ02「人間樹の星」第6回(最終回)■(1985年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://ameblo.jp/yamadabook