yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回

●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回

一つの恒星がある。名前を「タンホイザー=ゲイト」という。
星の中心部に緑色の液体で充たされた空間があった。
 そこに巨大な″木″が浮遊していた。
″木″は意思の集合体であり、自らをハーモナイザーと呼んでいた。
虚空からの信号をハーモナイザーは受けた。
彼はその信号を分析し、推理した。その信号は小球にある「生命球」
の消滅を意味していた。
同時に一つの決意が、彼の意識の中で生まれた。
ハーモナイザーの末端部へ、中央神経叢を通じ、一つの刺激が送られた。
ハーモナイザーの末端部には、数多くの個性群体が付着していた。それそれは
小さな球体であり、それがまるで根に付着しているように群体を構成していた。
個性群体のひとつである「アー・ヘブン」は夢みていた。
たゆとう羊水の中で夢みる事を楽しんでいた。
アー・ヘブンの個性がいつ、どこの星で生まれ、また、いつハーモナ
イザーに同化されたのか、その記憶は消え去っている。
『アー・ヘブン、目ざめよ』
突然、声がアー・ヘブンの体の中に響いていた。
誰だ。
この快いまどろみの中で私をめざめさせるものは。

アー・ヘブンは怒りを感じた。
『アー・ヘブン。使命を与える。すぐに旅立つのだ』

使命を与えるだと、
誰が、いったい、何の権利があって、
私を目ざめさせるのだ。
おまけに旅に出ろだと、何を言っているのだ。

『アー・ヘブン、それが、お前の運命なのだ』
運命だと、そんなものなど、とっくの昔に忘れてしまった。
私に何をさせようというのだ。
『アー・ヘブン。お前は一つの世界を作るのだ、私の代理人として』
世界だと、
世界とは何だ。
それにそんなに価値を持つものなのか、世界を作ることが。

『アー・ヘブン。動け。分前が自ら動こうとしないのなら、私が動かす』

あー、やめてくれ、私はこの羊水から離れたくがいのだ。
しかし、無情にもアー・ヘブンの球体は末端部から切り放され、ハーモナイ
ザーの導管に吸い込まれた。上へ上へと扱いあげられる。

 アー・ヘブンの球体の上から何かが、かぶせられたのを、アー・ヘブンの意識
は感じた。
 何かをかぶせられたまま、導管の内にあるアー・ヘブンの体は急激に加速
度を増し、羊水の外、さらにはタンホイザー・ゲイトの外へとはじきとばされた。

 アー・ヘブンの体を包んでいるのは「胞子」と呼ばれる飛翔体だった。
アー・ヘブンの体は、タンホイザー・ゲイトから離れてゆく。

アー・ヘブンは、自分の故郷、タンホイザー=ゲイトを観察する。真中に緑色の輝きが見
えた。羊水湖の輝きだった。
私はあの中で眠っていたのだ。できれば戻りたい。そうアー・ヘブンは思った。

しかし、「胞子」は回転しながら、太陽光流に乗り、銀河を横切って行く。
 長い旅路になるだろう。
そうアー・ヘブンは感じていた。そして、自らの体を冬眠状態においた。
 アー・ヘブンも、また一つの運命を荷っていた。
(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第3回●(1987年作品) 
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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