yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

遙かなる絆 -ランナー第 2回

遙かなる絆-ランナー第2回
(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

第2回

 エジプト、カイロ郊外にある、エスパー研究所が、内
発爆弾によって襲撃されたのは、2017年5
月のことであった。
 この攻撃は、超テロ集団死の天使(フイダイ)の仕業
と思われたが、詳細は不明である。
 現場に到着した警官達は、あたりの惨状に我が目をう
たがった。
内発爆弾は、その爆発が内部に向かい収斂するのである

爆弾が投げ込まれたのはESP能力がまだ充分に発揮さ
れていない子供達の訓練センターである。
 肉片が凝縮されて、ころがっている。肉片と研究所内
部の機械が奇妙な具合に絡み合っているのだ。
体育館の広さ程ある部屋に、ボーリングのボール大の肉
片が数十個ころがっていた。おまけに焼けこげ
だ肉の匂いがした。
 警官の一人は、嘔吐した。その時、その警官はある.
一条の光線が建物の中を照らしているのに気づい
た。光線のあたっている所にうごめきがあった。生き残
っている子供がいたのだ。
 子供はまるで嬰児のように体をまるめていた。
 警官は急いで、その子供をだきあげ、救急車に乗せた
。その時、光は消えていた。彼は「光は、世界
最古の建築といわれるギゼーのピラミッドの方から来て
いたに違いない。これは大いなる神の守護であ
る」と報告書に書かかれた。
 そのたった一人、助かったエスパーは、カイロ病院の
特別病棟の中で、十年間眠り続けた。
 彼は全く成長せず、幼ない姿のままで十年間すごした
。意識は戻ってこなかったが、生体活動はその
まま続いていた。名前は、「マコト」という。彼は血液
検査等の生体検査によって、日系の孤児であると判
断されていた。

 ケロン戦役時、戦闘巡航艇が、月近くをまわっている
外航植民船の残骸の中で彼マコトは発見されたのだ。
彼以外に生存者はなかった。不思議なことに、外航植民
船は、植民省のビッグコンピュークーにはフ″
イルされていなかった。それは2016年のことであった。
そのマコトは、このエスパー研究所で育成中、
事故にあったのだ。


 「死体配達人」がり。カート家を訪れたのは、2022年
8月のことであった。
黒い礼服を着た死体配達人、正式名称、宇宙連邦軍軍員
死亡連給人である。

 モニターテレビで芝生の上を歩いて来る死体配達人を
見ていたヘルムの両親は、ひどく衝撃を受けた。
 「まさか、私の息子が」ヘルムの母親はその場でくず
れ落ちた。父親は気丈にまだ立っていたが、その
体はふるえていた。
 無表情な死体配達人は、玄関に出迎えたヘルムの父親
に、静かに告げた。
 「あなたの息子さん、連邦軍、『第62装甲機団装甲機
兵、ヘルム=リッカート曹長は、2022年6月30日、
土星環戦役でおなくなりになりました」
 ここまで聞いて、気丈だった父親は膝をくずした。
 「ヘルムが」                  
                       ’
 「リッカートさん、しっかりして下さい。まだ話の続
きがあるのです。軍団付属の医療船が、リッカー
曹長の肉体の一部を収集したのです。‘我々のライフ
サイエンスを使って、彼を蘇生させることはでき
ます」
 「お願いします。どうかヘルムを」
 母親が、部屋から飛びだしてきて、死体配達人の前に
ひざまずくようにした。
 「が、奥さん、元通りの体にはできないのです。サイ
ボーグにならざるをえないのです」
 「え、サイボーグ」
 両親はお互いの顔を見合った。サイボーグ。この時代
では、サイボーグは数多く存在している。が、
これまではリッカート家にとっては、サイボーグなど縁
のない話であった。外の嵐が急にリッカート家
に襲いかかってきたのだ。
 ロボットのような冷たい肌。母親は生理的嫌悪感から
身ぶるいをした。私の子供あのヘルムが、鋼鉄
の体になるなんて!
 死体配達人は母親の心を読んだようにいった。
「大丈夫です。奥さん、最近のライフサイエンスは進ん
でいます。合成皮膚も、人の皮膚と比較してわ
からない程進んでいます‐0近づいてもほとんど人間と
変わりありませんよ」
 両親は相談し、サイボーグ手術をヘルムに受けさせる
ことにした。
「幸運だっ’たのは、ヘルム曹長の脳漿が、無事に回収
されたことです。もしそうでなければ我々はこうい
う提供をしなかったでしょう。
 残酷なようですが、この提案に付け加えておかなけれ
ばならない事があります。サイボーグの手術に
は、莫大な金を必要とします,この金額は失礼ながら、
一家の財産ではあがなえません」
「と、いいますと、ヘルムの体は」
「そうです。お分かりかもしれませんが、ヘルム曹長
体は、「サイボーグ公社」の所有物となります。彼
がサイボーグとして仕事を遂行する毎にそれに相応する
金額が支払われ、それが手術料金に相当した時、
晴れて自由の身になれるのです。どんなタイプのサイボ
ーグになるかによって、後々の給与が異なり、
それだけ自由の身になるのも早くなるのです。サイボー
グのタイプは数千種類あります。このメニュー
から選んで下さい」
 両親はしぶしぶながら、その差し出されたメニューか
ら、タイプを選び、サイボーグ公社への契約書に
サインをした。この時に、ロード・ランナー、ヘルムは
誕生した。            
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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