遙かなる絆-ランナー第12回
遙かなる絆-ランナー第12回
(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html
「ぐわっ」
サムナーはひっくり返り、外壁上でのたうつ。
サムナーの体からエネルギーがはとばしっている。
サムナーの体は白熱化していた。
「どうしたんだ、サムナー」
ゆっくり起き上かったヘルムが、サムナーの様子をうかがう。
サムナーの体は趨電磁波をまわりに流していて、近づきようがない。
苦しい息の下からサムナーが言う。しかし、発声器も変調し、声が変わっている。
「行けよ、ヘルム、月にな。俺はお前に負けたよ」
サムナーは静かに言った。
「作業用ポッドをここまで動かしてこよう。君をここに放ってはおけん」
「仏心を出すな!いい、行け、早く行くんだ。
早くしないと、月のメースチングクレーターの出口が破壊されるぞ」
ムーンウエイの終点,ゴールがなくなると、サムナーは言うのだ。
「何。出口が封鎖される!」
ヘルムは考えていたが、
「だめだ。お前をここに放っておくわけにはいかん」
サムナーを助けるために、ヘルムは数キロ先に繋留されている作業用ポッドの方
へ走りはしめた。
ムーンウエイのライン内では、急に人工重力が消滅していた。
「うわっ」
ヘルムはムーンウェイ王からはじきとぱされる。
人工重力が消え、軌道内の内容物が脱出用ハッチか心はじきだされたのだ。
眠ったままのマコトの乗ったカプセルも噴出する。
ヘルムは、カプセルを叩きながら叫けぶ。
「マコト、起きてくれ、君の力だ。念動力しか、ここでは力がない」 ぃ
マコトはカプセルの中で目ざめる。
「俺とサムナーを、あのポ。ドの中に動かしてくれ」
「事情は’わからないが、とにかく、言われたとおりにしよう』
マコトの念動力によって、三人は作業用ポッドの中に入ることができた。
サムナーの体は、しかしまだ勤けない。
「これからどうする。ヘルム」 ’
とマコトは心配そうに尋ねる。
「もう残りはわずかだ。‘俺としては走り続けよう」
途中かち、わりこむように、サムナーが言った。
「やめておけ、それよりこのポッドを使い次の作業ステーションまで進むんだ。
作業ルート内の自己防禦システムが作動している。どんな敵が現われるかわからんぞ」
「ヤツの言う事は信じられるか、マコト」
「本当の事を言っているようだよ」
「が、残念ながら、この作業用ポッドの燃料は限られている」
サムナーが言った。
「とりあえず走る所まで走ってみよう。サムナー、悪いが、君をここに残していくぞ」
「わかった。それが一番いいだろう」
テロリストハンター、サムナーはまだ元の調子をとりもどしていない。
「もう燃料がきれかけている。とりあえず、この近くの作業用ハッチに繋留しておこう」
作業用ハッチから、作業用回路へ入り、さらに軌道内に戻る。
「それじゃ、マコト、走るぞ」
ロードランナー、ヘルムはマコトを肩に、伝説の中へと、ゴールへとその最後の走りを始めようとした。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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