yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

東京地下道1949■第4回浮浪児のグループの運営で、首領の竜と鉄はもめる。竜の妹恵がなだめようと、鉄は獲物のロシア人所有の昔の江戸城の地図をうばい逃走。

TC東京地下道1949■1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命は
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東京地下道1949■第4回浮浪児のグループの運営で、首領の竜と鉄はもめる。竜の妹恵がなだめようと、鉄は獲物のロシア人所有の昔の江戸城の地図をうばい逃走。
 

東京地下道1949■第4回

飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

 ●http://www.yamada-kikaku.com/

 

東京地下道1949■第4回 

 

ナイフの鉄のどす黒い顔がうなる。

「ああ、おおありだよ。このグループの方針て奴だ。なんで全員が一度な、竜よ。お前さんの前で獲物を、広げるなきゃならないのだ。でめえでとった獲物は、総て自分の物でいいじゃないか」

 

「鉄よ。グループの掟を忘れたのか。相互補助ってのがグループの基本のルールなんだぜ。お前、それとも忘れたのか。お前、鉄が、アメリカ保安部隊に撃たれて、熱を出し、うなっていた時、ここにいる皆にな、看病してもらったことを」

 

鉄の顔が赤くなり、しばらく黙って、それからまた、うなる。

「それはそれ。これはこれさ」

少し考えていう。

 

「力のある者が、より多くをちようだいする。これがあたり前だぜ。涙ちょうだいの平等主義なんて、、アメ公だけでたくさんだ。ゲップがでるぜ。わかったぜ。俺はなあ、この相互補助のグループとやらを抜けさしてもらうさ」

「ああ、いいぜ、でていけ」グールプの首領である竜が声高におおじた。

 

「兄さん」

 竜の妹の恵が、兄をなだめようとした。

 

そして鉄に言った。

「鉄、いま、グループを離れるのねは危ないわ。アメリカ保安部隊がベビーギャング狩りに力を入れているのよ。特にあなたは凶悪な部類「ウオンテッド・リスト」に載っているわ」

恵は強く言った。

 

「いい、鉄。考えなさい。考え直しなさい。グループには、いえ、竜兄さんにはあなたが必要なの。まして、明日の食糧車襲撃はどうするの」

 

鉄が、アメリカ保安部隊に撃たた傷でうなっていた時、に主に病してもらった 実は竜のいもうとの恵なのだ。それを鉄は恩に思っているし、恵みには頭があがらない。

 

鉄に悲しそうに恵に言った。

「恵、お前には特に世話はなっているが、これだけはどうもな。俺は、やはり、集団行動ってのが性にあわないんだ。それに俺には、この守り神があるからな」

 

 鉄は、愛しい子を触るように、服の袖から隠していたナイフを取り出し、刃先をエロチックに口びるでなでる。

 

「いい、ほおっておけ、恵」

 竜のきびしい声がとぶ。

「こいつにかまうんじゃない」

「でも兄さん」

 

「ふふ、兄妹けんかは、ほかでしてくれよ。おみやげにこのトカレフはもらっていくぜ」

 

 鉄は、今日の獲物、ソビエト軍製の「トカレフ」拳銃に再び手をのぱす。

 

竜の拳銃が火を吹く。が鉄にあたってはいない。

「何をするんだ」

 鉄は、反射的に竜にナイフを投げようとし、一瞬思いとどまった。

 

「よしな。そのトカレフ拳銃は、置いていくんだ」

 

 鉄は竜をにらんでいたが、しばらくして、ニヤリと笑う。

 

「わかったよ。トカレフは、竜、お前さんへの最後のプレゼントだ」           

 

 鉄は、アジト入口のドアを開け、荒々しくでていった。

 

不思議なことに、先刻手に入れたカバンの事はー言もいわなかった。

 

隠れ家に、しばらく静寂があった。 いやな雰囲気をかき消すように

竜が張り切って、急に大声をあげる。

 

 「さあ、みんな気にするな、それよりカバンの中身が問題だな」      

 カバンの中は書類がほとんどで、ずぶぬれたった。

 

ロシア語でかかれていた一片の紙片がビニール袋につつまれていた。

 

 もう1枚はは日本語だったが、古い文字で江戸時代のくづし字であった。

「どうやら地図のようだな」

 仲間の一人が言う。 

 

「まん中の大きな部分は、皇居、昔の江戸城の様だな」

「これは金になりそうか」

「わからん。伊藤にでもみせるか」

 

伊藤は、古買屋で、竜たちのグループは時々、獲物を売っているのだ。

 

その時、突然、グループアジトの部屋が暗闇になる。

部屋じゆうの明かりであるロウソクが、消えている。

 

誰かが竜をなぐりつけた。物音がした。

襲撃か! 対抗グループか!

それこそアメリカ保安部隊か!

皆一瞬、ちじこまって身動きができない。

 

気をとりなおした者が、アジトのろうそくの火を再びつけた。

数本のナイフが、壁や机にささっていた。

「くそ」

ナイフの刃が、部屋じゆうのろうそくのしんの部分をぶち切っていたのだ。

 

「おい、見ろ、地図がないぞ」

 

「くそっ、鉄のしわざだ」       

「まだ、間に合う。おいかけよう」

「そうだ。いまなら、すぐ近くにいるはずだ」

 

「やめて分け」

竜がー声いった。

「なぜですか。竜さん」

「今日はもう、遅い。これ以上争いたくはない。闇やみでは不利だ。ナイフはあまり音をたてないからな。それに、明日は、例の大仕事がまっているだろう。体を休めて分け」

 

不承不承、部下の連中はこたえる。

「そうですか。竜さんがそう分っしゃるなら」

 

「くそっ、鉄の奴、こんどあったら、ただじゃおかないぞ」

「おまえの腕では、鉄に殺されるのがオチだぜ。やめておけ」

「そういわれりゃ、そうだな」変に納得している。

 皆、笑った。

 

「よし、皆、明日の大仕事にそなえて、もう寝るんだ」

 

恵は、兄の竜のそばにより、ちいさい声で言った。

「兄さん、ありがとう。鉄を追いかけないのね」

「おしい奴だぜ、あいつ鉄も」

といいいながら、竜はでかける準備をしている。

 

「で、それは、兄さん、今からどこへ行くつもりの。」

「明日の略奪の現場の下見だ。俺一人だけな」

 

(続く)20190925改定

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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