yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ドリーマー・夢結社■第4回Kは、タワーを破壊し飛び降り、夢の島にむかった。

ドリーマー・夢結社(1987年)●夢王たちの饗宴パート2●クネコバ・スプローギンは世界を夢世界の集合体とした。
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ドリーマー・夢結社■第4回Kは、タワーを破壊し飛び降り、夢の島にむかった。
 

ドリーマー・夢結社■第4回(1987年)星群発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

チバポートタワーにいるハンターと呼ばれる男の一人が

Kに怒鳴る。

「寝ぼけるのはよしてほしい。さっそく本題にはいろうじゃないか。お前のマスターの居場所を教えてもらいたいな」

「わからない、何の事をいっているのかわからない。ドリーマーハンター

君達は人違いをしているんじゃないのか」

「それじゃ、聞くぞ、お前は誰だ」

 「……」

Kは言葉につまった。

「鏡を見てみろ」

いきなり他の男がKの眼の前に鏡を突き出した。

「これは……」

Kの目や鼻がうすぼんやりと映っている。

はっきりとしていない。カメラのピントがあっていない感

じだ。顔の輪郭が崩れかけている。

「そうだ。まだドリーマーとしてのアイデンティティがはっきりしていないのだ。お前は消えかけてい

 るのだ」

 「うわあーつ」

  恐怖だ。これを恐怖といわずに何と言おう。

Kは大声をあげていた。その声は部屋のあらゆるものを振動させた。

「くっ、こやつは……」

 声は超音波の域に達していた。

「やめさせろ、そいつの口を閉じさせろ」

男達は部屋の中でのたうちまわっている。部屋は音の拷問室となっている。

声の振動でタワーの強化ガラスに亀裂が走った。

Kの眼にそれがうつる。Kはそのガラスのひびわ

た部分に体ごとぶつかっていった。

誰かがKの体をつかもうとしたが、それを振りはらいKはタワーの外部に飛び出す。

激しい音がし、Kの体は千葉を見渡せる空間に浮かんでいる。

太陽の光で粉々に飛び散ったガラスの破片がきらめく。

同時に亀裂がチバポートタワーの展望室あたりへ広がっていく。

いまやチバポートタワー自体も震動していた。

kの声が武器なのだ。

Kはチバーポートタワーを大破壊した。

ボートタワーの上部から割れた強化ガラスの破片の群れがなだれの様に海へ落ちていく。

すでにKは海面につっこんでいた。

東京湾の水は冷たかった。上からガラス破片の滝が襲う。

Kは、深く水中にもぐり、流れに巻き込まれないように動く。

東京湾の上では初秋にもかかわらず、ウィンドサーフィンをやっている若者達がいる。

サーファー達は、チバポートタワーから崩れおちてくるガラスの破片の滝から逃れようとした。

が、間断なくなだれ落ちる滝の様なガラスの破片にのみこまれていく。

人間の体がバラバラになり血の海と化す。

Kは乗り手のないウィンドサーフィン機器の端をつかまえた。ボードの上に乗る。ア″プホールーラインを握って倒れていたマストをもちあげる。

ブームをつかむ。

Kは容易にウィンドサーフィンをあやつっていた。チバポートタワーの崩壊の

ガラス破片の滝からのがれたのだ。

なぜだ。

俺はこのウィンドサーフィンに乗れるのだ。

Kは自問していた。やった事があるのか。

それに奴らは自らを「ドリーマーハンター」と名乗っていたが。

何者なのか。

俺はドリーマー?

疑問が次々とわいてくる。が、とにかくここを離れよう。

■ウィンドサーフィンは西へ向かっていた。

東京湾西には夢の島がある。

Kは彼が勤きまわるにつれ。世界が出現し。

また消滅していることに気づいていなかった。

Kの体を中心にして50㎞の範囲にしか世界はなかった。50キロの圏外は無であった。

■しかしながら、

50キロの範囲で東京湾上に黒い管があがっていた。

潜望鏡だ。

国籍不明の潜水艦が東京湾に潜り込んでいるのだ。

潜水艦指令室で潜望鏡をのぞきこんでいる男がいる。

その男は艦長の方を向いて言った。

「彼はどうにか自分の進むべき方向を知っているようだな」

「でも、完全には覚醒していないようですね」

 艦長は答える。

「ふっ、そのようだ」

 そう言った男の顔には表情がない。

男は仮面をかぶっているのだ。

その仮面はイタリアのカーニバル

でつかわれるもので、笑いの表情だ。

「よし、艦長、Kの後をゆっくり追ってくれ、多分、行きつく先は夢の島いやドリームーアイラソドだろう」

■Kは風向きにあわせて器用にウィンドサーフィンをあやつっている。

千葉港から東京湾を横切って。対岸の東京に近づきつつあった。

高層ビルのすがたがはっきり目に入ってくる。東京ベイアイランド群だ。

海岸が見え始めた。海岸ぞいに複雑な形をした建物が目にはいってきた。

何かの工場だろうか。

Kは知らなかったがここはドリームーアイランド、夢の島なのだ。

ここでは今、子供達に夢を与えるための人形が作られていた。

子供達は自分の夢を人形を前にして語りかけるのだ。

すると、人形ドリームドールは彼らの精神をその望んだ世界へ連れていってくれる。これをドリームトリップと呼ばれていた。

人形はドリーム‥ドールと呼ばれ、子供達だけでなく

大人もほしがった。

そしてその人形にとりつかれた子供たちがドリームチャイルドなのだ。 

ドリームチャイルドのうち成長しても、ドリームドールから離れられない人間がいる。

それがドリームドールを操るトリーム・マスターなのだ。

トリーム・マスターの強力な精神力は自分自身の夢の中から、

生身の人間を具現化し現実世界へ呼びよせた。

それがドリーマーなのだ。

ドリーマーとは、他の人間の夢から生まれた人間。そう、存在すべきはずがない人間なのである。

ドリーマー・夢結社■第4回

(1987年)星群発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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