ドリーマー・夢結社第10回 ワルシャワ条約機構軍は、スプローギンを仲間と共に抹殺しょうとして夢結社本部を攻撃する。
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ドリーマー・夢結社第10回
(1987年)星群発表作品
■私が夢世界だったのか。
『俺は自分の夢地球に生きているのだ』
覚醒したKの体からはオーラが出ていた。
彼はすべての始まりを思い出していた。
■「スプローギン大佐、君の計画はすべて水泡に帰した。観念したまえ」
リポフ中尉の声はワルシャワ旧市街にこだましていた。
リポフ中尉を始めとするポーランド・ワルシャワ条約軍はスプローギンの家をとり囲んでいる。
「もう逃亡は不可能だ。まわりの道路はすべて遮断されている」
返事はない。
「5分間待っている。5分間の間に出てきたまえ。スプローギン大佐、さらに夢結社の諸君」
リポフにとっては長い5分間だった。家の中はまったく動きが感じられない。リポフ中尉は不愉快そうに吸っていたロシア製タバコを投げすて、半長靴でぎゅと踏みつけた。「時間です」
かたわらのスワーヴェフ軍曹が言った。
「よし、攻撃しろ」
あたりはAKMライフルの発射光と銃声に包まれる。
突入グループがドアに向かりてなだれ込んだ。
ワルシャワ条約軍研究所主任、スプローギンと彼の串いる夢結社は恐るべき思想集団だった。
ソビエト連邦を盟主とする東側陣営とアメリカ合衆国を中心とする西側陣営。その戦争用に開発された幻覚剤JP三五九を東側陣営ワルシャワ条約軍の倉庫から盗み出し、全世界にばらまこうとしていた。
内通者から、夢結社がスブローギンの家にひそかに集まっているという情報が入った。ただ
ちにポーランド・ワルシャワ条約軍情報部リポフ中尉は情報部局長ソネ将軍に呼び出された。
「いいかね、リポフ中尉。JP三五九という薬はそもそもこの世に存在しないのだ」
ソネ将軍は開口一番こう言った。頬が心なしかひきつっていた。
「わかりました。その薬は消去します」
リポフ中尉も汗をかいている。
「いいかね、繰り返す。薬も始めから存在しないのだ。ついでに夢結社の奴等も始末しろ」
つまり、リポフ中尉は彼らの処刑を命令されていたのである。
リポフ中尉の前に、最初に家へ突入した一群の兵士が戻ってくる。
ガスマスクをはずし、リポフに敬礼する。
「同志中尉、大変です、家には誰もおりません」
「何だと、彼らはどこへ……」
「地下通路の入口がありました。御覧いただけますか」
「わかった、そこへ案内しろ」
リポフは半壊しているスプローギンの家の中に入る。応接室の暖炉の奥に穴があいている。
「ここからどうやら逃げたようです」
兵士が告げた。
「よし、私が先に入ろう。ライトをかせ」
ライトを持ったりポフが穴をくぐった瞬間、その兵士はにやりと笑い、
リポフ中尉の後頭部をAKMライフルの銃床でなぐる。リポフは気を失った。
リポフの意識が戻ってきた。目の前はリノリュームの床だ。まだずきんと頭の奥が痛む。
「くそっ、あの兵士は夢結社の奴が化けていたのか」リボフは独りごちた。
「そうだ」声が頭の上からする。
リポフ中尉は頭をふりながら、何とか立ちあがる。目の前にスプローギンのぼんやりした姿がある。
「スプローギン大佐」
「そうだ、リポフ君、私の話を君に聞いてほしかったんだ」
「あなた方夢結社の思想は。世界を滅ぼす事じゃないのか」
「いやいや、我々はJP三五九によって、世界に平和を持たらすっもりだ」
「あなたのたわ事を聞く耳など持ちあわせてはいない」
リポフ中尉 リポフは叫びながら、反射的に腰に手をやる。ホルスターにまだマガロフ拳銃が装着してある。リポフはマガロフ拳銃を引き抜き、スプーーギンに向けた。
「あなたを、国家正義の名において、ここで処刑する」
うなりながら、リポフ中尉リポフはマガロフのトリッガーをひきしぼる。
銃声が何度か続く。
リポフ中尉はあっけにとられた。スプローギンの体を銃弾が突き抜けていた。
「驚いたかね、リポフ君、これはホログラムだよ。私の今の姿を見せてやろう」
ドリーマー・夢結社第10回
(1987年)星群発表作品20210807改訂