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源義経黄金伝説■第7回★弁慶と牛若の争いを見て「争い事は、武士たちにお 任せなるのだ」源空、後の世にいう法然は、牛若につげる。

 
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第7回★弁慶と牛若の争いを見て「争い事は、武士たちにお 任せなるのだ」源空、後の世にいう法然は、牛若につげる。
 

源義経黄金伝説■第7回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

言うが早いか、弁慶は、背中から引き抜いた薙刀を一閃していた。

普通の人間ならば、真っ二つである。

が、弁慶の薙刀には、手ごたえがない。

目の前にあるはずの、血まみれの体も残ってはいない。

「はて、面妖な」

「ふふっ、ここだ、ここだ」

 弁慶の後ろから声が聞こえて来る。

すばやく、背後を見返すと、橋げたのうえにふわりと牛若が乗っている。

まるで、重さがない鳥のように、それは乗っているのだ。

「貴様は、飛ぶ鳥か」

「ふふう、そうかも知れぬぞ」

不敵な笑みが、牛若の顔から漏れている。

鞍馬山の鳥かもな」

 その声音は、完全に人を食っている。

牛若は、自分の力を他人に見せるのが、うれしく、楽しいのだ。

「お前は、平氏のまわし者か」毅然と、牛若が言う。

「何を言う。平氏など、物の数ではない」

そう答えるが早いか、弁慶は橋を蹴って、欄干のうえに薙刀を数振りする。

その刀の動きは、常人の目には捕らえられぬ。

とはいえ、明かりなどない夜中である。誰もそれには気付かぬ。

ただ、野犬が、恐るべき力の争いに驚き、鳴き声をあげている。

「どうした、弁慶。この私を捕まえることができぬか」

にやりと笑う牛若の顔に、弁慶は、憎しみを倍加させる。

 西行と鬼一法眼は橋の影からのぞいている。

「どうだ、遮那王様の動き」

「よかろう。あのように成長しておられるならば、奥州の秀衡殿の手元にお送りしても、十分役にたつだろう」。

「秀衡殿もお喜びであろう」二人笑い会う。

西行殿、後はお任せるぞ」

「何をこしゃくな」

が、弁慶の額には、うっすらと汗が浮かんでいた。

「弁慶、止めるのじゃ」

突然異形の老人が、弁慶の前に姿を現し、争いを止めようとした。

強い、この男は、

弁慶はこの男を見て毛穴がひゅつと閉じるの感じた。

「なぜだ、鬼一殿。この若造を殺せというたは、お主ではないのか」

弁慶はこの老人にくってかかる。

「もうよいのだ。お主もこの若者の力がわかったであろう」

「そうであればこそ、なおさら許せぬ。俺の力を見せねば、気が済まぬ」

「そうだ、鬼一。止めてくださるな。この大男に負けたと言わせるまでは、

私も気が済まぬ」欄干の上にいる牛若が、答える。

「こやつ、いわしておけば」

背中より大槌を引き抜いて、弁慶は打ってかかる。

ズーンと大きな音が響き、バラバラと橋げたが川中に崩れ落ちる。

「おお、何をする。橋を壊すつもりか」

「橋が壊れるが早いか、お主が死ぬのが早いか」

 騒ぎを聞き付けた検非違使たちが六波羅の方から駆けつけてくる。

「いかぬ」

弁慶はそれにきを取られる。

「ぐぅ」

思わず弁慶が叫び、気を失う。牛若の高下駄が蹴りを弁慶の天頂に加えてい

た。「やれやれ」

鬼一は橋のしたに用意してあった小舟に弁慶の体を隠し、鴨川を下った。

「牛若殿、もう少しお手柔らかにお願いいたすぞ」

「戦いの舞台を移そう」

「こわっぱ、どこに逃げる。怖じけづいたか」

息を吹き返し、苦しい息の下から弁慶が叫ぶ。

「何を言う。お主がそう暴れるから、そら平家の郎党が現れたではないか」

平家の屋敷に点々と灯が灯り、その灯が五条の橋を目がけてくる。

かなりの人数のようだ。牛若が跳躍する。

「おのれ、何処へ」弁慶は上を眺め、叫んだ。

「頭の悪い坊主。この京都で晴れ舞台と言えばわかろうが…」

声は天から響いた。

「くっ、あそこか。わ、わかったぞ。約束を違えるなよ。半刻後じゃ、よい

な」遠方で見ていた、西行と鬼一法眼はお互いに顔を見合わせていた。

「いかん、あやつら、まさか…」

「そうじゃ、あの寺だな」

二人は疾風となり、東山を目指している。四人が目指すは、坂上田村麻呂公の寺、清水寺である。

牛若は、弁慶の前で、清水寺の舞台で、ひらりひらりと舞っている。

「ふっ、弁慶、どうだい。貴公もこの欄干の上で、京都の町を見てゆかぬ

か。よう見えるぞ。特に平家屋敷がな。おっと、貴公の体では、ちと無理かもな」

「くそっ、口のへらぬこわっぱだ。そのようなこと、俺にもできるわ」

「弁慶、止めておけ。お主の重さ、この清水寺の舞台を沈ませるぞ」

「牛若殿、もう止めておきなされ。このお方もお疲れなのだ。お主の武勇、充分

私も見せてもろうたぞ」

いつも間にかその場所に源空も現れている。

「争い事は、武士たちにお 任せなるのだ」

源空の頭の中には、子供のころの自らの家の惨劇が埋まっている。

 源空、後の世にいう法然は、この後、京都市中で僧坊を営み、後白河法皇九条兼実らの知遇を得ることになる。

 後に鎌倉仏教と呼ばれることになる、新しい日本仏教は、この源平争乱という武者革命と時を同じくしつつ起こった「宗教改革」だったのである。この時の源空には、まだその片鱗は見えない。

続く2016改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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