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源義経黄金伝説■第48回★頼朝は「義経さえ、差し出せば奥州の地安堵する」の書状をしたため、奥州の跡を継いだ藤原泰衡のもとに。

 
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第48回★頼朝は「義経さえ、差し出せば奥州の地安堵する」の書状をしたため、奥州の跡を継いだ藤原泰衡のもとに。
 

源義経黄金伝説■第48回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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■ 1187年文治3年 鎌倉

 平泉の藤原秀衡死亡の知らせは、早馬で鎌倉にも伝わっている。

「どうやら、秀衡殿、お亡くなりになった様子でございます」

大江広元が頼朝に告げた。

「そうか、秀衡殿が、、とうとう亡くなられたか」

その言葉は、頼朝自身に向けて、ある種の決断を語っている。

大江広元には、頼朝が何やら寂しげに見えた。宿敵を失った寂寥感かも知れ

なかった。大江広元にとっては、千載一遇に思える。

その時期を逃しては、平泉王国を滅ぼすことはできまい。気が抜けたように

なっている頼朝を、勢いづけなければと思った。

「いよいよ、奥州攻めも近うございますな」

「いや、まだ先になさねばならぬことがある」

「それは…」

「わからぬか、大江広元義経は平泉王国の大将軍となっておる。

平泉が義経の元、一致団結をしておれば、我々も恐ろしいわ。

あやつの戦ぶり記憶していよう。戦ぶりでは、残念ながら、この日本一の武者よ」

「それに十七万騎の奥州の馬があれば、恐ろしゅうございますなあ」

 よくよく考えれば、まだ平泉王国は、強固なのだ。

「そこで、考えよ。どうすれば、よいかをな」

「内部をもっと分裂させますか」

大江広元のお得意の策諜を使わねばならない。

「そうだ。義経さえ、差し出せば、奥州の地を安堵しようとな。そういう書

状をしたため、使者に持たし奥州の泰衡のもとに出そう。

のう、大江広元、奥州藤原秀衡平清盛よりも恐ろしかったわ。俺の誘いに全く乗らぬ」

大江広元の目には、頼朝の体がやや震えているように見えた。気のせいだろう

か。それに…、

広元は気に掛かることを告げた。

「例の黄金の件は、いかがいたしましょう。まだ、わが鎌倉の手元に…」

「そのこと、うちやっておけ。秀衡さえ亡くなれば、奥州すべての黄金は、我

が鎌倉のものとなる。大事の前の小事だ」

東大寺が、文句をいいますまいか」

 京都のことなどをもう気にせずばなるまいと、広元は考える。それに関して

は、頼朝の方が一枚上手だった。

「何の届かなかったことにすればよいであろう。そうだ、黄金を、この頼朝

からの贈り物としよう。鎌倉幕府の将軍として、京都へ、また南都奈良に赴か

ねばならぬからのう」

「それは、また京、朝廷への大姫様のお披露目ともなりましょう」

 そのことも大江広元にとっては、忘れてはならなぬことだった。

頼朝がどうであれ、京都との連枝は繋いでおかねばならぬ。強固にしておかねばならなかっ

た。この鎌倉幕府を完全に支配し、京都に向かせればならぬ。

「そういうことだ。きらびやかに飾り、坂東の田舎者と思われている我々

が、美しく着飾った姿形を、京都の貴族どもや民に見せてやろうではないか」

「さようでございますなあ」

それには、大江広元も同じだ。

うだつのあがらない京都の貧乏貴族の俺が、新しい治世者の一人として、

都大路を従者を多数連れ、行列として練り歩けるのだ。

今度は、私が、京都の皆を羨ませる番だ。大江広元は、自らもきづかず

に、昔の傷あとをなでていた。

その額の傷は、往時の義経の凱旋行列を思い起こさせていた。

2012(続く)

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