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山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

源義経黄金伝説■第17回■鎌倉の源頼朝の屋敷を 西行法師が 平泉からの東大寺への沙金の輸送、その安堵のために訪れていた。

 

YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第17回■鎌倉の源頼朝の屋敷を 西行法師が 平泉からの東大寺への沙金の輸送、その安堵のために訪れていた。
 

源義経黄金伝説■第17回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 驟雨が、鎌倉を覆っている。

頼朝の屋敷の門前に僧衣の男が一人たっている。

警備の騎馬が二騎、二人は、この僧を物乞いかと考え、追い払おうとしていた。

「どけどけ、乞食僧。ここをどこと心得る。鎌倉公、頼朝公の御屋敷なるぞ。貴様がごとき乞食僧の訪れる場所ではない、早々に立ち去れい」

語気荒々しく、馬で跳ねとばさんばかりの勢いだ。

「拙僧、頼朝公に、お話の筋があって参上した。取り次いでくだされ」

「何を申す。己らごときに会われる、主上ではないわ。どかぬと切って捨てるぞ」

ちょうど、頼朝の屋敷を訪れようとしていた大江広元が、騒ぎを聞き付けて様子を見に来る。

「いかがした。この騒ぎは何事だ」

 広元が西行に気付く。

「これは、はて、お珍しい。西行法師殿ではござらぬか」

「おお、これは広元殿、お久しゅうございます。みどもを乞食僧と呼ばれ。何卒頼朝公にお引き合わせいただきたいのです」

「何ですと。天下の歌詠み、西行殿とあれば、歌道に詳しい頼朝様、喜んでお会いくだされましょう」

 広元が武者に向かい言う。

「この方をどなたと心得るのだ。京に、いや、天下に名が響く有名な歌人の、西行殿じゃ。さっさと開門いたせ」 広元は西行の方を向かい、

「重々、先程の失礼お詫び申しあげます。なにしろ草深き鎌倉ゆえ、西行殿のお名前など知らぬやつばらばかり」

「私は、頼朝殿に東大寺大仏殿再建の勧進のことを、お頼み申したき次第です」

「何、南都の…東大寺の…勧進で」

広元の心の中に疑念が生じた。

その波は広元の心の中で大きくなっていく。

「さよう、拙僧、東大寺勧進、重源上人より依頼され、この鎌倉に馳せ参じました。何卒お許しいただきたい」

 頼朝と西行が対面し、横には大江広元が控えていた。

西行殿、どうでござろう。この鎌倉の地で庵を営まれましては」

「いやいや、私は広元殿程の才もありません」

「それは西行殿、私に対するざれ言でござりますか」

「いえいえ、そうではございません」

西行殿、わざわざ、この頼朝が屋敷を訪れられましたのは、歌舞音曲の事を話してくださるためではありますまい」

西行の文学的素養は、絢爛たるものがあった。

母方はあの世界史上稀に見る王朝文学の花を開かせた一条帝の女房である。

 西暦一千年の頃、一条天皇には「定子」「彰子」という女房がいたが、定子には「枕草子」を書いた清少納言が、また彰子には「源氏物語」を書いた紫式部などが仕えていて、お互いの文学的素養を誇っていた。

「さすがは頼朝殿、よくおわかりじゃ。後白河法皇様からの書状をもっております。ご覧ください」

 西行は、頼朝に書状をゆっくり渡す。

 頼朝は、それを読み、

「さて、この手紙にある義経が処置いかがいたしたものでしょうか。法皇様は手荒ことなきようにおっしゃっておられるが」

義経殿のこと、頼朝様とのご兄弟の争いとなれば、朝廷・公家にかかわりなきことですが、日々、戦に明け暮れること、これは常ではございません」

「それはそれ。この戦や我が弟のことは私にまかされたい。義経は我が弟なればこそです。我が命令に逆らいし者です、許しがたいのです。……」

 頼朝は暗い表情をした。しばらくして、表情が変わる。

続く2016改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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源義経黄金伝説■第16回■東大寺の荘園である黒田荘。黒田の悪党たちに京都王朝の人間から、平泉からの東大寺勧進沙金を奪えとの指示が。

 
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第16回■東大寺の荘園である黒田荘。黒田の悪党たちに京都王朝の人間から、平泉からの東大寺勧進沙金を奪えとの指示が。
 

源義経黄金伝説■第16回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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奈良にある黒田荘くろだのしょう(現三重県)は、東大寺の荘園である。

先月の東大寺があげての伊勢神宮参詣もこの地で、重源を始め多数の僧が宿をとっている。いわば東大寺の情報中継基地である。

 あばら家の中、どぶろくを飲んで横たわっている二人がいる。太郎佐。そこに弟の次郎佐が訪れていた。

「兄者、兄者はおられぬか」

「おお、ここだ、次郎左」

「何じゃ、なぜそんな不景気な顔をいたしておるのだ」

「これがよい顔をしておられるか。お主、何用だ。俺に金の無心なら、無用だぞ」

「兄者、よい話だ。詳しい話は、ここにおる鳥海から聞け」

蓬髮で不精髭を生やした僧衣の男が汚らしい格好で入ってくる。

着物など頓着していない様子だ。

顔は赤銅色に焼けてはいるが、目は死んでいる。

鳥海は興福寺の悪僧(僧兵)として、かなりの腕を振るった人間だ。

園城寺比叡山との悪僧たちとの争いでも、引けを取らなかった。

が、東大寺炎上の折りから、腑抜けのようになっていた。

一人生き延び、この太郎左、次郎左のところに転がり込んでいいのである。

 鳥海は、話を始めた。

「太郎佐殿は、先年、東大寺が焼き払われたこと、ご存じだろう」

「おお、無論、聞いている」

東大寺の重源、奥州藤原氏への勧進を依頼した。さて、使者は西行法師」

「たしか先月、重源ちょうげんと、、そうか、あのおいぼれ。確か数え七十ではないか」

「供づれはいないと聞く。いかに西行とて、この我ら黒田悪党のことは知るまい」

「ましてや、みちのく。旅先で、七十の坊主が死んだとて、不思議はあるまい」

「お前、それでは、平泉からの東大寺勧進の沙金を…」

太郎佐は言う。

「そうよ、奪えというご命令なのだ。この話しはな、京都のやんごとなき方から

聞いた。ほれ、このとおり、支度金も届いておる」

「さらば、早速」

「まて、まわりがおかしい」

太郎左が皆を圧し止めた。

動物のような感がこの男には働く。

「ようすを見てみろ」

次郎左が命令を聞き、破れ戸の隙間からまわりをみる。

鳥海も他の方向を覗き見る。

「くそっ、お主ら、付けられたのか。馬鹿者め」

 まわりは、検非違使けびいしの侍や、刑部付きの放免(目明かし)らが、十重二十重に取り囲んでいる。検非違使の頭らしい若侍が、あばら家に向かって叫んでいた。

「よいか、我々は検非違使じゃ。風盗共、そこにいるのはわかっておる。おとなしく、縛につけ。さもなくば討ち入る」

「くくっ、何を抜かしおるか」

太郎左、次郎左は、お互いをみやって笑った。

戦いの興奮の血が体を回り始めているのだ。

「来るなら来て見ろ。腰抜け検非違使め」

大声で怒鳴った。

「何、よし皆、かかれ」

若い検非違使が刀を抜き言った。

「ふふっ、きよるわ。きよるわ」

「よいか、次郎左。ここは奥州の旅の置き土産。一つ派手にやろうか」

「あい、わかった」

太郎左と次郎左は、小屋の後手に隠してあった馬に乗り、

並んで頭の方へ駆けていく。侍は、急な突進にのぞける。

「ぐわっ」

太郎左の右手、次郎左の左手に、握られていた太刀が交差した。

 瞬間、検非違使の頭が血飛沫を上げ、青空に飛びあがっている。

後の者共は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。

「ふふっ、少しばかり、馬をいただいておこう」

 三人は逃げ去る侍たちの方へ目がけて駆けていく。

 

太郎左たちは、板東地方(関東)に入り、盗みを立ち働いていた。まず、第一の目的はよい馬を得ることである。

 近畿地方の馬と、阪東や板東の馬とは、種類が違っていた。

脚力、体長とも、板東の馬が勝っている。

武者の家が焼けている。

中には多くの死人。

そこから阪東の馬に乗り飛び出してくる三人の姿がある。

「さすが阪東の馬よのう。乗り心地や、走りごこちが違うなあ」

 次郎佐は叫ぶ。

「それはよいが、次郎左、屋敷に火を放ったか」 太郎佐が、その言葉を受ける。

「おお、それは心得ておる。この牧の屋敷は、もうすぐ丸焼けだ」

「行き掛けの駄賃とはよう言うな。

屋敷の地下に埋めたあった金品もすべてこちらがものよ」

 鳥海が言う。三人は走り去る

続く2016改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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石の民「君は星星の船」 第16回■Bグループの頭光二を対抗するVグループのローレルとハーマンが捕まえてアジトに連れて行こうとした。その状況に男が急に出現し光二に用があるという。

 
IT石の民「君は星星の船」■(1989年作品)石の民は、この機械神の統治する世界をいかにかえるのか? また石の民は何者なのか?
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石の民「君は星星の船」 第16回■Bグループの頭光二を対抗するVグループのローレルとハーマンが捕まえてアジトに連れて行こうとした。その状況に男が急に出現し光二に用があるという。
 

石の民「君は星星の船」第16回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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「光二さんよ、我々におとなしく、ついてきてもらおうか」えらく背の高い奴ハーマンがいってい

た。

「くそっ。おまえ達は」光二の足元は、地上10mの空気なのだ。

「いわずとしれたVグループのキッズよ」

「Bグループのヘッド光二を捕まえたと、あっちゃあ、大手柄なわけさ。おっと、光二よ、

あまりあばれると、俺たちの手から、地面へ落ちるぜ。ちょうどおまえのアネキみたいに

な」にきび面のローレルがいう。

「くそう、おまえか有沙を殺したのは、」

「おいおい、人違いだぜ、俺はおまえのアネキなど、殺しちゃいない」

「じゃ、おまえか」高い奴ハーマンにいう。

「知らないぜ、光二、少なくとも、俺たちじゃないぜ」

「おい、ちょっと,だまらそうか、しめあげるか。これほど暴れられると、体をもちにくいからな」

ローレルがハーマンに同意を求めた。

「そうだな、連れて行きやすくするか」Vグループのキッズは話しあっていた。

「やめろ」

光二はさけんでいた。

ローレルは腰のベルトにはさんであった電撃銃を取り出す。光二の体に当てる。

「ぐう」光二は気絶していた。二人は光二を一度地上に降ろす。

ローレルとハーマンはホースの後ろに光二の体をしばりつけようとしていた。

その時、突然、目の前地上に一人の男が出現していた。

「だれだ、おまえは」ローレルが男にきずき、声をあげる。

「光二の味方か」ハーマンがわめく。

「Bグループのキッズじゃないな」

「それに平和チームの者でもないな」

「なんだ、こいつの格好は」

仮装行列かい」

「ここは舞台じゃないんだ。関係のない奴はひっこんでろ」これだけ、ローレルとハーマ

ンがいっても男は無言だ

 男は光二の様子を探って入る。

「ちっ、気持ちのは悪い奴だぜ。おい、速く。アジトまでかえろうぜ」

「そうだな、Bグループの邪魔がはいらないうちに」

 二人は気を失っている光二をホー

スの後ろに乗せて飛び上がろうとしていた。

 その時、静かにしていたその男が、目にもとまらむ早さで、Vグループのローレルとハ

ーマンの間に割り込んで、ホースの操縦管を持つ二人の手を、男は両手でおさえていた。

「何、何をしやがるんだ。てめえ」

「やはり、Bグループのキッズか、おまえは」男は何もいわない。

「そうかい、それじゃ、御相手しなきゃな」

「悪いことはいわない。私の相手になるな。私

はその光二に用があるんだ」男が初めて声をだした。男の顔の表情は、過去が尋常ではなかった

事をあらわしている。

「光二に用があるだと」Vグループの二人は顔をみあわす。

「ふふっ、残念ながら、我々もこの光二に用がある。俺達Vグループが先客だ。ものには順番がある。おっさん、そのくらいの事はわかっているだろうが」

「順番だよ、次には光二を渡してやるさ」

「ああ、もし光二が生きていればの話しだがな」二人は笑う。

「私はそんなに待つ訳にはいかん」

男の目は遠くを見るような眼だった。ローレルはこの男のマリーンブルーの眼を見て、ぞ

っとした。

「おまえはフッコウ・ドームへの来訪者だな」

「俺たちはこのフッコウ・ドームでは少しは知られた名前なんだ、Vグループといってな」

「我々にさからおうというのは、ここフッコウ・ドームの法律を破っているのと同じさ」

「残念ながら、私にも法律がある。そのわたしの法律にしたがって光二をもらっていく」

男は二人に言う。

「どうやら、このお客人は俺たちに、喧嘩をうっているようだぜ。どうするハーマン」

「それならば、歓待しないってほうはないな、ローレル」

「あとで泣いてもだめだぜ」二人は男にとびかかっていく。

石の民第16回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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緑なる星にて第6回●クリアキンとイアラの前に地球の神が現われ導く。2人は地球を救うべく最終判断をした。

 
GS緑なす星にて(1978年)●クリアキンとイアラは地球を救うべき最終判断をした。
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緑なる星にて第6回●クリアキンとイアラの前に地球の神が現われ導く。2人は地球を救うべく最終判断をした。
 

緑なる星にて第6回(最終回)

(1978年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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■地球人類が力をもっていなければ、過去の虐殺がくりかえされるだけだ。その鍵をにぎっているのはクリアキンだ。羊船団の人々が力をもっていなければ。彼は人類に対するユダとなる。

クリアキンは絶望的なまなざしでロケットの墓場のロケット残骸を見わたした。

たしかにかなりの年月がたっていた。

どうやって羊船団の人々をみつけだしたらいいのかクリアキンには、はまったく手がかりがない。

おそらくロウ星人達もその科学力を駆使し。探査したに違いない。そのあとをどうして孤立無

援のこの俺がみつけることができるのだろうかとクリアキンは思う。

もう羊船団の人々の方からクリアキンをみつけてもらう以外に方法はないように思えた。

クリアキンはいまや、ロウ星人の追跡装置である「イアラ」をほっておこうとした。しかしイアラはクリアキンの足に少しもおくれず、ついてきていた。

一週間たったろうか。クリアキンには日数がもうわからなくなっていた。

密林の中を目標もなく歩きまわっていた。もうロケット群のあった地点もどこだかわからなくなっていた。彼の体のエネルギーも底をついてきていた。

あるのは彼女の冷たい目と果しない緑の地獄だけだった。ふらつく足どりで、それでもクリアキンは人類の誇りと自尊心で立ちつづけていた。

■スコールが、クリアキンの体をうっていた。

何時間くらい前からだろうかクリアキンは大地の上に横たわっていた。

彼女は近くで助けおこそうともせずぼんやりとクリアキンを見ていた。クリアキンは立ちあがろうとしたが。よろけて意識を失なってしまった。

雨足が早くなり。あたりは泥沼のようになっている。

イアラはクリアキンの側にしゃがみこみ、雨滴は彼女の生気のない顔を激しくたたいていた。

その時、どこからともなくのびてきたつるがクリアキンと彼女にからみつき、つりあげ、地下の大きな穴の中へと彼らを送り込んだ。

穴は底。の方で広大な空間となっていた。白く光る物が散乱していた。

つるに横たえられたクリアキンはかすかに目を開いた。目の前は累々たる地球人の白骨だった。宇宙服らしいものがへばりついている。

服の肩章に、かろうじて羊船団のマークがついている。クリアキンはまた目をとじた。

もう何もみたくないと思った。

事態は悪くなるばかりだ。羊船団の人々はいまや地球を新しく支配しつつある植物群に絨ぼされたに違いない。羊船団の人々はもういない。

これで俺の命もつきた。

クリアキンはもう稀てのものが失なわれ、煉獄の中でのたうって死ぬように感じた。

イアラはまだ白骨の山の中にたっていて、あたりをながめている。やがてイアラもあやつり人形の糸が切れたように倒れた。

どこからともなく黒い大きな影があらわれ.クリアキンとイアラの体をかかえ、闇の中に消えた。

■耳もとで声がした。

「クリアキン、目ざめよ」

クリアキンの意識は虚空の中をさまよっていヽた。

その声は力強く、頭の内に響き、父親のそれにも似ていた。クリアキンは巨人と向いあっていた。

その顔は白髪と白髪で被れ。彫が深く。神々しい。青い眼は一種の力でさえあった。

クリアキンは疲労困意していた。巨人の突然の出現は一種の恐慌状態をひきおこした。

「クリアキン、私を恐れることはない。君たち人類が神と呼んでいたものだ」

「あなたが神。では私を助けるためにこの地球に私を呼んだのですか」

「クリアキン、見るがいい」

イアラが現れ、涙をたたえ、クリアキンの胸に飛びつく。

「クリアキン、30年たってしましったのね」

イアラの顔を凝視する。先ほどまでとは異なる表情だ。

「私はロウ星人の手からのがれることができなかった。その時もあなたが好きだった。でも

ロウ星人の力が私の自由を奪っていた」

「イララは私の力で再生できた。クリアキン、君の勇敢な行動へのプレゼントだ。

さらにこれを見るがよい」

神の手には銀の筒が握られていた。

「太陽光線変換機ですね」

「残念ながらそうではない。君の体が超コバルト爆弾なのだ。それを処理したいがためにこの体を表し、君にそれを告げるために私は現れたんだ」

 「超コバルト爆弾ですって」

 「そうだ。お前の体に信管がセットされた瞬間、この地球がふきとんでいただろう。お前の体

は動く爆弾だったわけだ」

 「一体だれがそんなことを」

 「覚えているだろう。君が、ある惑星でサイボーグ手術を受けた時だ。一部の狂心的な地球人の末裔が君を選びセ″卜したのだ。君はロウ人達に占領されている地球をロウ星人もろとも消滅させるために帰ってきたのだ」

クリアキンは憑き物が落ちたように思った。疑問がわいてきた。

「白骨は羊船団の人達なのですか」

「いやいや、それは間違いだ。彼らはいまや地球を再占領した」

「何ですって」

「地球上の草や木が彼らの今の姿だ。羊船団が地球を出て後。私の意識。の。一部は彼らと共

にあうた。ロウ人の追跡器を破壊したのも私だ。

彼らに安住の地はなく。長い航海の間に悲惨な状態となった。母星を失なった者の末路は

あわれだ。彼らはホームシックにかかっていた。しかし地球へは帰ることがぞきない。そ

れで私は地球人達を植物の姿で再度地球にもどすことにした」

「では。この地球全体を肢う緑、つまり植物群がすべて、地球人なのですね。樹々がロウ大の大占領のあとにしては再生が早すぎると思っていました」

「彼らは自分達の人間としての体を捨て、精神だけもって植物の体との共生を図ったのだ。

大昔から人類は大自然と戦い征服することで、自然を治めることができると考えていた。それが人間

の思いあがりにすぎないことを宇宙の放浪の後気づいたのだ。彼らは地球の自然と調和し

なければならないことになる。

それには邪悪な存在、考え方の本となる人間の体を離れ、植物の中に精神マインドとして住むことにしたのだ。ロウ人達は地球人の姿を探しているのだ。発見できるわけはない。

人間の精神をすて去うた体は。さっきのように白骨となったのだ。

私が彼らを地球上に連れもどした時。タイムスリップをおこさせ、ロウ人の占領直前の

地球へと導いた。

ロウ人が襲来した時にはすでに。羊船団の人々は種子として地球にいたの

だ。30年の間。彼は増大繁殖したのだ。そして大地を彼らと彼らの子孫で占領したのだ」

 神の手の中で安心と平和の中に浸ったクリアキンとイアラはお互いをいだきながら。

神のあとにしたがった。

 クリアキンとイアラは共に眠りにつこうとする。

物質転換機の中で2人は植物のマインドとなる。

あとには2人の体が残る。人間とアンドロイド。これをロウ星人が発見するだろう。

 地球の大地がある限り、人は滅びることはないのだ。地球上の植物として永遠に生きて

いける。ロウ星人をいつの日か追い払うこともできるに違いない。

 緑なす星の上でクリアキンとイアラは、緑の木々として変身メタモルフォーゼした。

緑なる星にて第6回(完)20210807改稿

(1978年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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源義経黄金伝説■第15回■平家に焼かれた東大寺の再建の中心人物、重源(ちょうげん)が、若い僧と湯釜を囲んで話し合っていた。

 
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源義経黄金伝説■第15回■平家に焼かれた東大寺の再建の中心人物、重源(ちょうげん)が、若い僧と湯釜を囲んで話し合っていた。
 

源義経黄金伝説■第15回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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おなじころ、奈良東大寺

焼け落ちた大仏の鋳造も終わり、これからは大仏殿の建築にとりかかろうとしている時である。

 治承四年(1180)平重衡の手で東大寺をはじめ興福寺の伽藍が焼かれ大仏が焼けた折、京都の貴族はこの世の終わりと思ったものだが、、重源ちょうげんの一団、勧進聖の手で、東亜においての黄金国日本の象徴である東大寺大仏は、その姿を再びこの世に現している。

 牛車が荷駄を載せ、大工、石工、彫師、諸業の人間が一時に奈良に集まり、人のうねりが起こっている。

その活気に囲まれ東大寺の仮屋で、この勧進事業の中心人物が、もう一人の若い僧と湯釜からでる湯気を囲んで話し合っている。

「どう動かれますでしょうか。西行さまは」、

 若い僧が年老いた僧に尋ねる。

西行殿が、東大寺にために、どれほどの勧進をしてくださるかという問いですかな、、」何か言外に言いたげな風情である。

「左様、、でございます」

 若い僧は、この高名な僧の話し振りにヘキヘきする事もあるのだが、なんと言っても、当代「支度一番したくいちばん」の評判は

彼の目から見ても揺ぎ無いところだ。

このような難事業はやはりこの漢しかできまい。

「お手前は、まだまだ、蒼いですね、、」

「といいますと」

少しばかりの怒りが、若い僧の口ぶりに含まれている。

西行殿は、あるお方の想いで動いておられます。人生の最後の花と咲かせるおつもりです」

「では、平泉の黄金は、大仏の屠金はどうなります、、いや、しかし、重源ちょうげんさまは、昔、西行さまの高野の勧進をお手伝いされたのでは、、」

若い僧は、答えに困惑している。

「蓮華乗院の事ですか。ふう。あれはあれ、これはこれです。我が東大寺の伊勢への 参拝の件で西行殿は 恩は返してくれているのですよ。はてさて、物事はどう転ぶか、ですな」

 高野山の蓮華乗院の勧進を、西行が行っていた。

治承元年(1177)の事である。

 西行の働きで、歴史始まって以来初めて、、仏教僧が、伊勢神宮に参拝している。

重源ちょうげんの一団である。

西行は、神祇信仰者であった。

本年文治二年(1186)であった。

「重源様は、西行様と高野山では長くお付き合いされたと聞き及びます」

「そうです、西行殿が、高野山麓の天野別所に、妻と子も住まわせておったこともしっておりますよ。また、西行殿の弟の佐藤仲清殿が佐藤家荘園の田仲庄の事で、高野山ともめておられた事も、よく存じあげております」

「さらに、」

重源は少し、言葉をにごす。

「相国殿(平清盛)との付きあいも、よく存じ上げていますよ」

西行の実家、佐藤家の荘園、田仲庄は、紀州紀ノ川北岸にあり,粉河寺と根来寺の中ほどにある。

「ああ、和田の泊(現在の神戸港)も重源様の支度でございましたな。そうか。

それで、東大寺の闇法師である重蔵殿を、、お供に」

「そうです。すべては、西行殿が平泉に這いてからです」

 二人は、若い僧、栄西えいさいが中国・宋から持ち帰栽培した茶をたしなんでいる。

 独特の香ばしい馥郁ふくいくたる香りが、二人をゆったりと包んでいる。

続く2016改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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源義経黄金伝説■第14回★旅装の僧が、目の前の風景荒錆びた様子で噴煙をあげている富士山に嘆息する。背後には東大寺闇法師。

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源義経黄金伝説■第14回★旅装の僧が、目の前の風景荒錆びた様子で噴煙をあげている富士山に嘆息する。背後には東大寺闇法師。
 

源義経黄金伝説■第14回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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広野から見えるその山は、荒錆びた様子で噴煙をあげている。富士山である。

「おうおう、何か今の時代を表わしているような…」

 一人の旅装の僧が、目の前の風景に嘆息をしている。心のうちから言葉が吹き出していた。その歌を書き留めている。詩想が頭の中を襲っている。

湧き上がる溢れんばかりの想い。僧は、もとは武士だったのか屈強な体つきである。

 勢い立ち噴煙を上げているは富士の山。富士は活火山である。

『風になびく 富士のけぶりの空に 消えて行方も知らぬ 我が思いかな』

「我が老いの身、平泉まで持つかどうか。いや、持たせねばのう」

 老人は、過去を思いやり、ひとりごちた。

 豪奢な建物。金色に輝く社寺。

物珍しそうに見る若き日の自分の姿が思い起こされて来た。

あの仏教国の見事さよ。心が晴れ晴れするようであっ

た。みちのくの黄金都市、平泉のことである。

「平泉だ、平泉に着きさえすれば。藤原秀衡ひでひら殿に会える。それに、美しき仏教王国にも辿り着ける」

僧は、自らの計画をもう一度思い起こし、反芻し始めた。

 平泉にある束稲山たばしねやま、その桜の花、花の嵐を思い起こしている。

青い空の所々が、薄紅色に染まったように見える。

その彩は、絢爛たる仏教絵巻そのものの平泉に似合っている。

それに比べると都市まちとしては鎌倉は武骨である。

「麗しき平泉か、、そうは思わぬか、な、重蔵じゅうぞう殿」言葉を後ろに投げている。

後ろの草茂みにいつの間にか、黒い影が人の形を採っている。

東大寺闇法師、重蔵(じゅうぞうである。

西行さいぎょう様はこの風景を何度もご覧に」

「そうよなあ、、吾が佐藤家はこの坂東の地にねづいておるからな」

西行ー佐藤家は藤原北家、そして俵藤太をその祖先とする。平将門の乱を鎮めた藤原秀郷ひでさとである。

「重蔵殿、まだ後ろが気にかかられるか。はっつ、気にされるな。結縁衆けちえんしゅうの方々だ。ふう、鬼一法眼きいちほうがん殿が、良いというのに後詰めにつけてくだされた」

一息。

「さてさて、重蔵殿、鎌倉に入る前、いささか、準備が必要だ、御手伝いいただけるかな」

しっかりとした足取りで、西行は歩きはじめた。

続く2016改訂

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源義経黄金伝説■第13回 静の動静を悩む者。 静の母親 磯禅師(いそのぜんし)が、固唾を呑んでその舞いを見ていた。 裏切られた。 「禅師が苦労を無にするつもりか」

 
源義経黄金伝説■第13回 静の動静を悩む者。 静の母親 磯禅師(いそのぜんし)が、固唾を呑んでその舞いを見ていた。 裏切られた。 「禅師が苦労を無にするつもりか」
 

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義経黄金伝説■第13回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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 桟敷の中央にいる源頼朝が、急に立ち上がった。

「あの白拍子めが。この期に及んで、ましてやわが鎌倉が舞台で、この頼朝

が面前で、義経への恋歌を歌うとは、どういう心根だ。この頼朝を嘲笑し

ているとしか思われぬ」

 頼朝は毒づいた。それは一つには、政子に対するある種の照れを含んでいる。

「よいではございませぬか。あの静の腹のありようお気付きにありませぬか」

 政子はとりなそうとした。薄笑いが浮かんでいることに、頼朝は気付かぬ。

「なに、まさか義経が子を…」

「さようでございます。あの舞いは恋歌ではなく、大殿さまに、我が子を

守ってほしいというなぞかけでございます」

「政子、おまえはなぜそれを……」

 疑惑が、頼朝の心の中にじっくりと広がって行く。

今、このおりに頼朝に、自分の腹の内を探らせめる訳にはいかぬ。

あのたくらみが、私の命綱なのだから。政子は俯きながら黙っている。

「……」

「まあよい。広元をここへ」

 頼朝の部下、門注所別当大江広元が頼朝のもとにやってくる。

「よいか、広元。静をお前の観察下に置け。和子が生まれ、もし男の子なら

殺めよ」

[では、大殿。もし、女の子ならば、生かして置いてよろしゅうございますな」

「……それは、お前に任せる」

 広元はちらりと政子の方を見ていた。

 頼朝は広元と政子の、静をかばう態度に不審なものを感じている

 政子は静を一眼見たときから、気に入っていた。その美貌からではなく、

義経という愛人のために頑として情報を、源氏に渡さなかった。

その見事さは、一層、政子を静を好ましく感じた。

また、京の政争の中に送り込まれるべく、その許婚を殺されたばかりの、

政子と頼朝の子供、大姫をも味方に取り込んでいた。

義経の行方を探索する人間は、何とか手掛かりを取ろうと静の尋問を続けた。

が、それは徒労に終わった。

尋問した武者たちも、顔には出さなかったが、この若い白拍子静の勇気を

心の中では褒めたたえていた。

 観客の中で、静の動静を悩む者が、もう一人。

静の母親 磯禅師いそのぜんしが、固唾を呑んでその舞いを見ていた。

裏切られた。そういう思いが心に広がっている。愛娘と思っていたが、

「あの静は、この母、禅師が苦労を無にするつもりか……」

やはり、血の繋がりが深いものは…。

この動乱の時期に女として生き残って来た者の思いが、

頭の内を目まぐるしく動かしている。

その思いは、しばらくの前のことに繋がる。

静の母禅師は、政子の方を見やった。

続く2010改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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