yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

緑なす星にて第5回■クリアキンはイアラの手を放す。そして地球を脱出し30年後帰ってきた。しかしロウ星人に捕獲され過酷な命令を受け取り実行する羽目となる。彼のたった1人の人類の戦いだ。

GS緑なす星にて(1978年)クリアキンとイアラは地球を救うべき最終判断をした。
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緑なす星にて第5回■クリアキンはイアラの手を放す。そして地球を脱出し30年後帰ってきた。しかしロウ星人に捕獲され過酷な命令を受け取り実行する羽目となる。彼のたった1人の人類の戦いだ。
 

緑なす星にて 第5回

(1978年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

クリアキンは谷底へおちていくその瞬間イアラの顔をなぜか本当に美しいと思った。

やはり俺はイアラを愛していると思った。

 

しかし彼女はもう彼の手の中にはない。

 

「イアラ」

 クリアキンは目をつぶり、全神経を集中し、体じゅうの力をこめて絶叫した。

 

 やがて後悔の念が急激にクリアキンを襲い、ふるえが体じゅう犯拡がった。山道の上につっぷした。目をあけたクリアキンは見た。

 

イアラはクリアキンが手をぼずした時のままで空間に浮かんでいた。

 

彼女の体は不透明になっていて輝いていた。

右手をクリアキンの方にのばし、顔を上にあげている。左手にはクリアキンの命、太陽光線変換器のスペアをにぎっていた。

 

■驚きから立ち直ったクリアキンは、この谷の伝説を思いだした。

 

この谷は「願望の谷」と呼ばれている。

古来一つの熱烈な願いを持つ者がこの谷を通りすぎ。心から悲願成就を笥む時。不思議な事象がおこるといわれていたのだ。

 

ある種の超能力を増幅増大させる力がこの谷のどこかに潜在していたのだった。

 

イアラはクリアキンの望みにより。瞬間の心象により、クリスタル(水晶)化された。

彼女は死にはしない。けれど生きていて動けるわけでもない。

 

 クリアキンは手近のつたをロープ代りにすぐ真下のイアラの体を持ち上げた。重さはあまりなかった。

近くに心ら穴を捜し。ロウの追跡ロボット達にみつからないように中に運んだ。エの左手に気付いた

クリアキンは太陽光線変換器をとりはずそうとした。

 

外から音が聞こえてきた。新手の戦闘ロボットが近づいてきたようだ。クリアキンは必ずこの場所。

この洞窟へ帰ってくると心に誓い、その場所をのがれた。                  

 

 

■地球を脱出することができたのは幸運だった。  

 

ロウ星へむかう生体実験用の地球人の死体中にもぐりこんだクリアキンは、途中すきをみて、宇一宙船の救助艇で逃亡をはかった。

 

何年かの異星人との放浪後、ある星で破壊されていな地球人のプランテーションを発見した。

そこで数年暮らした。

 

再び地球の上を踏み、イアラの水晶像。それに太陽光線変換器を手に入れるために、現在彼のイアラ

肩にうめられ、作動中の太陽光線変換器の寿命がつきるまで、ゆるされる限り、個人宇宙艇の建設にでとりかかったクリアキンだった。 

 

■クリアキンはイアラのクリスタル像をかくしてある空洞にたどりつく目的がある。しかもクリアキンのエネルギーはもう限界量を割りつ一つある。

 

イアラの左手の中の太陽光線変換器を手にしなければクリアキンは死んでしまう。サイボ4グ化され地上移動用にホーバークラフトを組み立て、宇宙船の墓場から一歩外に出たクリアキンは。地球の変貌に衝撃を受けた。

 

地球はあたり一面の樹海だった。

 

恐るべき勢いを持つ大森林。

 

植物群があますところなく大地を埋め尽くしているのだ。

 

ロウ星人の大侵略以前の地球はこうで礪なかった。なにか意志を持つ存在が地球に取り付き、地球を緑一色に塗りつぶした。そんな感じだった。

 

 

 かつて大都市があったと思われる場所、モこも密林が支配していた。ロウ人の光線兵器で

何も残らないほど焼き尽された所ですら、まるで何千年もの昔から。自然がすべてを治め

ているようなジャングルと化している。

 

クリアキンはこの地球の異変に驚愕しながらも畏怖、の念に心動かされていた。ホーバークラフト

の、エアーが濯木の葉や茎を押し倒す。

 

クリアキンにはあまり時間が許されていない。ロウ人は艇が連絡をたっていることに気が

ついている。おそらく墜落地点を発見し、そこから何かの証拠を見つけだし、捜索を開始

するに違いない。できるだけ距離をかせいでおかなければならなかった。

 

 イアラの洞窟に近づくにつれ。忘れていたはずの心の疼きが頭をもたげてきた。なぜ俺はあ

の時、手を離してしまったのか。自分自身の行為が目の前にはっきり思い浮べることがで

き.クリアキンの心は鯨で血を流すようだった。

それは苛酷な自問自答だった。その時を思い出す

ことは釦年の聞何回も思い出すとなくくりかえされ。悪夢となってクリアキンをいためつけるのだ

たった一人の地球人の女に違いないイアラ。体には冷汗がにじんでいた。

 

突然大きな樹木群が横にかしい言きて、ホーバークラフトの動きをとめてしまう。

木の葉がすべてを被い隠し、クリアキンも身動きができなくなった。遠くの方から爆音が近づく。

 

しばらくして、ホーバークラフトをおさえていた木々がもとにもどり.クリアキンは再び先へ急いだ。植物の異様な動きには驚いたが、考え込むひまはなかった。樹々のおかげで.ロウ星人の偵察艇にみつからなかったのだ。

 

 洞窟にたどりついたクリアキンはあたりの変化に予想していたものの、少なからぬ打撃を受けた。

 

洞窟のまわりにまるで壁を作りあげたようのい木々がおい茂り。入口をみつけるまでかなり

の時間をくいそうだった。クリアキンはしかたなくホーバークラフトからレイガンを取り出し。樹

木を焼き払おうとした。引き金をひこうとした時、植物が意志をもつかのごとく自ら道を

開いた。

 

ちょうど通り抜けるくらいの空間を作りあげた。クリアキンは気を配りながら、

ほら穴の暗闇に到着し。30年前とかわらないしめった空気をすった。

 

 「彼女」はそこに存在した。

 

クリアキンの心にとりつき離れなかったイアラの姿がそこにあった。思わず最後の数歩を走りよった。体は依然として印年間のほこりに埋れながらも光り輝いていた。

 

 

もう二度と心のかようことのないクリスタルをだきしめた。イアラの水晶像は右手

をのばし上を見上げている。あの時のまま氷結していた。

 

■突然クリアキンの右肩に激痛がはしった。クリアキンは後をふりかえりながらうずくまった。右肩はクリアキンの弱点だった。太陽光線変換器が寿命がつきかけているとはいえクリアキンに活力をあたえていた。それは右肩にうめこまれていた。

 

ろ対の触手を持ち赤銅色のうろこの皮膚を持つロウ人の姿

がクリアキンの背後にひかえていた。触手にはレイガンがにぎられている。

 

 捕虜になったクリアキンが洞窟からでる時、植物の・つるがのびてきてロウ星人のじゃまをしようとした。ロウ人達はレイガンで植物を焼き、やがてイアラづいてきて、しばらくの間クリアキンのホーバークーフフトの上でとどまっていたようだったが、やがて上空に停止していた船にクリアキンをつれてのりこんだ。

 

■クリアキンがつれていかれたロウ星人のドームは4本のろ00mはあるボールで地上からもちあげられ半透明の球形をしていた。多くのロウ星人達が活動を行なっていた。

 

一人の巨大なロウ星人の前にすわらされた

 

「クリアキン。始めに自己紹介をしておこう。私の名はベガ、ロウ軍地球管理委員会事務長だ。さっそくだが、君に一つの提案がある。もしこの提案を受けいれるなら、君の生存は保障しよう」

銀河共通語で話した。

「どうやら。話は分かったようだな。君に羊船団の行途を捜してほしいのだ。

君も知っての通り。最後の地球人の羊船団は我々の占領の前に連邦から許され、地球脱出をはかった集団だ。もちろん我々は彼らの追跡をしていた。連邦の目のとどかないところで抹殺す

るためにな」

 

 クリアキンはベガを殺したくなる。

「ところが我々の饉秀な追跡機は彼らを追尾できなかった。機械が消滅したのだ。それも

急にな。 さらに、羊船団がもどってきた形跡があるのだ。我々の強力なシールドを破ってだ。

 

君が簡単に我々の防衛圏を突破できたのは。君が帰ってくることが予想できたから

だ。それに30年前。君がたった一人でこの地球から脱出した時もだ。君を追跡すればク羊

船団にであうと考えたからだ。君は30年間我の手の内にあったのだ」

 

 クリアキンはうちのめされた。なんだと。何のための努力だ。30年間。長い月日だ。俺はいったい何のため」

ペガは言葉を続けていた。

 

「B202地点に羊船団のロケットが多数発見されたのだ。それも朽ち果てた姿で。無論地球人の姿はなかった」

「朽ち果てていた、、」

 

「それが、おかしな点なのだ。羊船団が地球を離れて30年しかたっていない。しかし我々

が発見したロケットは少なくとも30年以上前からそこにあるような様子なのだ。羊船団の

人間は地球にもど。てきている。これは我々は確信している。これを我々は放置しておく

わけにはいかない。君は羊船団の人間をみつけるきっかけだ。君は地球人だ。彼らは君を仲間と認め姿をあらわすだろう」

 

 「俺が仲間を売るようなマネをすると思っているのか」

 

 「君がそういうだろうと思っていた。それではこれではどうかね」

 

 クリアキンの目の前にイアラがあらわれる。イアラは生身の体だった。水晶像ではない。

 

 「イララ?」クリアキンは思わず吽んだ。

 

 「本当に君なのか」

 

 「そうイアラだ」

 かわりにベガが答える。イアラは表情を変えなかった。

 

「君の愛するイアラだ。ただし我々の超心理工学が改造行なった地球人のな」

 

「君たちが改造した」

 

「そうだ。我々が地球人のコミューン発見のために改造した多数の人間のスパイの1人

だ。それに君といれば羊船団と連絡がとれるかもしれないと我々は考えていた」

 

クリアキンの目の前の世界が完全に消滅した。今までの心の支えだったもの。それが心の中で音をた

ててくずれおちる。本当だったんだな。イアラが裏切り者だったというのは。

 

「事実なのだ。君のために水晶像から生き帰らせたのだ。君への我々ベガ星人の好意の印としてな」

 

「なぜ。神はあまりに残酷すぎる」

 

「神は地球人のものだ。残酷。地球人の他の星で行なったことを考えてみろ」

 

「イアラ、何とかいってくれ。うそだといってくれ」

 

「むだだ。声帯は回復させてはいないし今では完全な我々のアンドロイドだ」

 

 クリアキンはいすからとびだし、ロウ兵士にとびかかろうとしたが、電撃ショックを受け、床にくずれた。

「悪あがきはやめることだな。クリアキン君。君には羊船団の人間をみつけだす以外には生存の価値

はないと我々は考えている。イアラは我々の傀儡だ、人間は羊船団以外にはいないのだよ」

 

確かに.クリアキンは考える。イアラがあやつり人形だとすると今羊船団以外の地球人にあえる可能

性はゼロだ。

 

「最後に、イアラは我々の支配するままの人間だが。我々の心理工学技術をもってすれば。も

との人間として蘇生できる可能性もある。君がB202地点へ人間を捜しに行く時、彼女をつれ

ていくのだ。君が人閣を発見したならば彼女をもとどおりの人間としてやろう。それから

1つがいの地球人間の見本としてロウ星の博物館で生存をゆるしてやろう」

 

今生存できる可能性はそれしかなかった。

 

「連絡はどうするのだ」

 

「どうやらあきらめがついたようだな。連絡の点は心配ない。彼女がいればいいのだ」

 

「え、彼女が」

 

「彼女の見るものすべて。きくものすべてがこのスクリーンに展開される。彼女の眼は我

々の眼。彼女の耳は我々の耳だ。君は彼女を通じて我々に監視されている」

 

ロウ星人のドームに突然、振動がおこった。ライトが消える。

外のドームのフレームに巨大な植物の葉があらわれ。ドームをゆるがしているようだった。

 

 「ええい。いまいましい植物だ」

 

 ライトがつき。ベガの顔は怒りにふるえていた。それからクリアキンの方を向きいった。

 

 「植物には気をつけろ。君のいた頃の地球とは植物相が異っている。巨大な食人植物があ

ちこちに存在しているからな。植物たちが一つの邪悪な意志をもっているのだ。これはひ

ょっとしたら羊船団が何か関連しているかもしれない」

 

■クリアキンとイアラはB202地点に偵察艇で送りこまれた。

上空からカプセルで降下した。ロウ人の船はけっして着陸しなかった。羊船団の残骸の近く

には植物にからみとられたロウ星人の船が多数みられる。

 

太陽光線変換器は今のイアラの手にはにぎられいなかった。エネルギーがいつまでもつか

クリアキンには自信がなかった。ジャングルの中で倒れてしまうかもしれなかった。変換器さえあ

れば、クリアキンは超人にも々れる。強力な力を生みだすことができるのだった。ロウ星人にあや

つられているイアラは、何の役にもたたない

 

手助けが必要だった。羊船団の人々が力を有していなければ。ロウ星人を打ち倒 ″

力をもっていなければ、過去の虐殺がくりえされるだけだ。羊船団の人々が力をもっていなけれ

ば。彼クリアキンは人類に対するユダとなる。

 

緑なす星にて 第5回 20210804改訂

(1978年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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