yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

■義経黄金伝説■第43回(55回完結予定)

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義経黄金伝説■第43回(55回完結予定) 
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(C)飛鳥京香・山田博一 http://www.poporo.ne.jp/~manga/
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第6章  1189年(文治五年) 平泉

■7 1189年文治5年京都
 京都の後白河法皇御殿にも平泉落城の知らせが届く。
「頼朝、ついに平泉へ入りました」関白,藤原(九条)兼実が後白河法皇に悲
しげに報告した。
「そうか、しかたがないのう。平泉を第二の京都にする計画潰えたか。残念じ
ゃのう」
「せっかく夢を西行に託しましたが、無駄に終わりました」
「が、兼実、まだ方法はあろう」後白河は、また、にやりとする。
「と、おっしゃいますと…」 不思議そうに、兼実は問い返す。

(いやはや、この殿には…、裏には裏が、天下一の策謀家よのう。平泉を第二
の京都にできなかったは残念だが、次なる方策は)
「鎌倉を第二の京都にすることじゃ。源氏の血が絶えさえすれば、京に願いを
することは必定。まずは頼朝を籠絡させよう。さらに頼朝が言うことを聞かぬ
場合は…」後白河の目は野望に潤んでいる。
「いかがなさいます」
義経が子、生きていると聞くが、誠か」
「は、どうやら、西行が手筈整えましたような」
「その子を使い、頼朝を握り潰せ。また、北条の方が操りやすいやもしれぬ。
兼実、よいか鬼一法眼に、朕が意を伝えるのじゃ」
笑いながら、後白河は部屋に引き込んだ。兼実は後に残って呟く。

「恐ろしいお方じゃ」
兼実は背筋がぞくっとしている。

■1189年文治5年 伊勢
 西行も伊勢にある草庵で、平泉壊滅の知らせをききながら京都六波羅での
ある男との会話を回想していた。

 いまから二十九年前、永暦元年(一一六〇)
 西行は、北面の武士当時、同僚であった平清盛を訪れている。
 清盛と話す西行から、座敷の遠くに幼児と母親が見えていた。
「おひさしゅうござる。西行法師殿の巷の噂、ご高名聞いておる。これがあの
北面の武士、当時の佐藤殿とはのう」
 清盛は、西行に色々な歌を代作してもらったことを思い出して、恥じらい、
頭を掻いていた。
「いやいや、北面の武士と言えば、あの文覚殿も」
「いやはや、困ったものよのう、あの男にも」
「今は、確か」
「そうじゃ、後白河法皇にけちをつけ、伊豆に流されておる。のう、西行殿。
古き馴染みの貴公じゃから、こと相談じゃ。この幼児、どう思う」
「おお、なかなか賢そうな顔をしておられますなあ。清盛殿がお子か」

「いや、違う。常盤の子供じゃ、名は牛若と言う」
「おう、源義朝がお子か」
 西行は驚いている。政敵の子供ではないか。それをこのように慈しんでいる
とは。清盛とは拘らぬ男よのう。それとも性格が桁外れなのか。自分の理解を
超えていること確かなのだ。
「そうじゃ、牛若の後世、よろしくお願い願えまいか。西行殿も確か仏門に入
られてあちらこちらの寺に顔もきこうが。それに将来は北の仏教王国で、僧侶
としての命をまっとうさせてくれまいか」

「北の…」
 西行は、少しばかり青ざめる。
「言わずともよい。貴公が奥州の藤原氏とは、浅からぬ縁あるを知らぬものは
ない」
にやりとしながら、清盛は言う。西行は恐れた。西行が秀衡とかなり深い関係
があり、京都の情報を流していることを知れば、いくら清盛といえども黙って
いるはずはない。西行は冷や汗をかいている。
「……」

「それゆえ、行く行くは、平泉へお送りいただけまいか。おそらくは、秀衡殿
にとって、荷ではないはず」しゃあしゃあと清盛は言う。西行の思いなど気に
していないように。
「清盛殿、源氏が子を、散り散りに……」
「俺も人の子よ。母上からの注文が多少のう」
 相国平清盛は頭を掻いていた。母上、つまり池禅尼である。清盛も母には頭
があがらぬ。この時が西行義経のえにしの始まりとなった。
(続く)
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