yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

■ロボサムライ駆ける■第三章 霊能師(2&3)

■ロボサムライ駆ける■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http:// www.yamada-kikaku.com/
第三章 霊能師(2)

 出発日がやって来た。
 主水は落合レイモンの屋敷に旅装で出向く。予備の品をいれた旅装バックパックである。門前が騒がしい。
「何だ、この行列は」
「おお、よいところへ来られた、主水殿。我が行列に加わられい」
 ざわめく人々の群から夜叉丸が現れ、挨拶する。
「夜叉丸様、この行列は」
「我がレイモン様の御行列じゃ。このまま復旧しつつある東海道高速道路をくだる」
「が、この行列、まるで大名行列ではござらぬか」
 というよりもチンドンヤかと、思いが頭をかすめた。
「よいか主水殿。今度のこの落合レイモンの西下りは、東日本都市連合の力を見せることにもあるのじゃ。またまた落合レイモンの霊能師としての力を見せつけなければならぬ。その威光を見せつける行列でじゃ。装飾の一部と思ってくれ」
 金属でできた機械籠が四つ。加えてそれを抱えて進むカーゴ型送行ロボットが数機。先触れを伝えるスピーカーロボットが四機。レイモンの旗持ちロボット十機。東日本都市連合の各市の旗を持つ旗ロボット二百機。生命液、潤滑油、洗浄液などを運ぶタンク型ロボット二十台。警備隊ロボット三百機などなど。 おまけは振袖チアガールズだった。振袖でありながら、下位置はミニスカートになつている和洋折衷のコスチュームをきた妙齢の三十名の女性群。まるで色物の世界である。
 主水はくらくらと、倒れそうだった。さすがにロボットなので倒れはしなかったが。
「これでは、私など必要ないのではございませんか」
 嫌みを言う。
「そうはいかぬ。よいか、主水殿は護衛ロボットとはいえ、徳川公の使い番でもあらせられる。従って、カゴ形バンを用意しておる。どうぞお使い下されい」
 夜叉丸は行列の後ろにある、行列よりもっと悪趣味なバンを示した。ゴテゴテした装飾がバンのスタイルをくずしている。
「うむ…」
 主水は逃げ腰になった。ひらめいた。よーしこれでいこう。断りの文句は。
「夜叉丸どの、私はこの籠の回りを警戒いたしましょう」
「といわれると」
「遊軍でござる……」
「主水どの、まさか、我が行列をあざ笑っているのではあるまいな」
「いえさようなこと……」
 おぬしよく分かってるのじゃないと思う主水。

第三章 霊能師(3)
 復旧しつつある東海道は中世世界のようになっていてとても静なのだ。
 特に早朝は、鳥たちの歌声がハーモニーを奏で、道いく人々の気持ちを和ませるのだが。 今、この東海道は、『いろは組』によって復旧工事が急がれていた。
 静寂の中ににぎやかな音がだんだんと近づいてくる。工事中のロボットたちが手を休めた。
「あの騒がしい、恥ずかしいご一行は」
 工事中の東海道を下る一行を見ていたロボットの一人が尋ねた。
「おお、あの昔、騒音条例があったころなら絶対つかまっておる団体か」
 わざとらしい説明を付け加えるロボットだった。
「知らないのか、霊能師落合レイモン様のご一行じゃ」
 もう一人が答える。
 いろは組にしきられたはぐれロボットの一群が、道路復興の建築工事を行い、そのエリアの霊写真をとらされていた。霊戦争のおり、なくなった人々の過去の霊をなぐさめるのである。
 このあたりは、空中衛星ボルテックスによって滅びた全日本連邦軍の残滓がいまだに発見される所である。にぎやかに打ち騒ぐ一団が通っているのはもとの高速道路である。
 近くに森林地帯が広がっていた。霊戦争後の生やした比較的新しい森林である。
 この東海道から遠く離れたバイオ林の中から、この一行をのぞきみる四つの眼。突然、うめき声を上げて、その一人が倒れた。
「うっ、何ごと」
 もう一人が相棒を介抱する。が、事切れている。咄嗟に自分たちが仕掛けた罠が返されたことを知る。
「恐るべきよ、レイモン」
 残った一人は独りごちた。
 二人は西日本都市連合が派遣したロボ忍であった。レイモンの霊力を調べるために、ここまで遣わされていた。
 霊写真を盗み取ることで、実力のほどを調べようとしていたが、逆にレイモンの『お霊返し』の術でロボ忍の一人が倒れたのだ。
 『霊返し』とは、霊写真への霊力を、送った本人に何倍もの霊力に倍増して返すものである。「おじさんたち、何しているんだい」
 その時、背後から、子供ロボットが急に現れていた。作業ロボットらしく、蓬髪で、汚れた小袖姿である。賢そうな顔をしている。というかやんちゃな顔である。靴みがき少年の顔である。ジャリンコちえの顔である。『いろは組』のはんてんを着ている。
「何でもない、あっちへいけ」
「おじさんが倒れているじゃない、大変だ」 といいつつ、子供はそのおじさんの顔を踏んでいた。
「大丈夫ぶーい」
 と叫んでいる。
「こやつ、騒ぐとためにならぬぞ」
「ははっ、わかったぞ。おじさんたち、忍びのロボットだね」
「なぜ、わかった」
「だ−って、忍者スーツをきているんだもん」 どーっとすべりそうになるロボ忍者。
「小僧、我々の姿を見たからには生かしてはおかぬ」
「うわっ、やめておくれよ、くれよ」
 そのジャリンコちえじゃない、子供ロボットは逃げようとした
「まて、まて」
 続いて旅装姿の侍ロボットが急に現れ、子供を庇う。
「貴様、何やつ」
 叫び、身構える忍者ロボット。
「待ってました」
 子供は叫ぶ。
 深編み笠が空中に、まるでフリスビーのように勢いよく飛んでくる。すんでのところでこのロボ忍は、深編み笠から逃れた。それは近くのバイオ樹木に深く突き刺さる。
 (こやつできる)
 そうロボット忍者は読んだ。このフリスビー野郎には、助成を頼んだ方が得策だろう。 後詰めの連中が別にいるのである。
「くそっ、皆出て来い」
 まわりに急に黒い影が現れる。
 西日本都市連合の使い忍び十名。
「ただでは帰してくれぬようだな」
 フリスビー野郎が言う。
「さよう、お代を払ってほしい。じゃない。貴様とそのこわっぱ、証拠が残らぬよう分解し、粉々にしてくれるわ」
「それはどうかな。粉々になるのはどちらかなあ」
 その男はにっこりとほほ笑んでいる。
 一瞬後、侍と子供ロボットのまわりをとりかこむロボ忍。
 続いてロボ忍の手から何かが次々と投げられた。手裏剣である。
 が、侍ロボットは瞬時刀を抜き、自在に振り回す。手裏剣はすべて足元に落ちていた。刀を動かす速度は目にも止まらなかった。
「くっ、我らが頭脳手裏剣を落とすとはただ者ではないのお、お主」
 頭脳手裏剣は、小型の電子頭脳を持ち、軌道を計算するいわば小型ロボットである。
「今度はこの刀じゃ…」
 黒い影が一つ、その男に切りかかる。
「まて…」
 ロボ忍者のリーダーが止めようとしたが。一瞬遅く、
「ぐわっ」
 そのロボ忍の体が三つにおろされている。機械油や生命液が噴き出ている。その動きはロボ忍群たちにも見えないのだ。
「見たか、聞いたか、さんまい降ろしの剣」「やったね。ピース」
「いかん、引け。覚えていろよ。お主、名前を聞いておこう」
「名乗るほどではない。が、覚えておくため答えてやろう。拙者、早乙女主水。徳川公国直参旗本ロボット」
「貴様が主水か。いずれ会おうぞ」
 ロボ忍は、名前を聞いて少し驚いていた。 彼らは一塊になり、姿を消す。
「主水のおじさん、助けてくれてありがとう」 子供ロボが擦り寄る。
「まあ、よい。危ないことには近づかぬ方がよい。特にこの御時世ではな」
「おじさん、お願いがあるんだ。俺をおじさんの使い番にしてくんな」
 急に顔を変え擦り寄る子供。
「といっても、お前の体は誰かに所属しているだろう」
「いや、所属していないーよ」
 子供は軽々しく喋る。
「みてごらん。その証拠さ」
 子供は自分の右肩を見せた。右肩にあるはずの登録番号が削り取られている。
「登録番号がないのか。お前、はぐれロボットか」
「ああそうさ、土木建設専用事業団『いろは組』に捕まって、この有り様さ。今この東海道復旧工事に使われているのさ。どうせ、俺が消えたって、わかりゃしないさ」
「そういうことなら、人助け。いやロボット助けかもしれんのお。ついてくるがよい。小僧」
 かねてから、いろは組のやり方には不満を持っていた主水である。
「俺は、小僧ではない。細工師の知恵ってんだい」
「よしよし、わかった、知恵。こちらへ」
 レイモンの一行から少し離れて歩いているいわゆる遊軍の主水だった。主水はゆっくりと木陰から騒がしい一群を、のぞき見た。
「ははん、おじさん、あの行列と一緒にいたくなかったね」
 図星である。
「いや、その、ちょっと、不都合があってな」「不都合って何なのさ」するどく尋ねる知恵。 どぎまぎする主水
「まあ、よいではないか」
「ふーん、まあよいことにしておこう」
 知恵にかるくいなされている。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■
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