yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

遙かなる絆 -ランナー第 4回

遙かなる絆 -ランナー第 4回


遙かなる絆-ランナー第4回
(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html
第4回
2026年、4月。
 地球連邦最大の精神界の大御所マニ導師が、彼の付き
人数人と一緒にカイロ病院の特別病棟を訪れていた。導
師はマコトの様子を近くにいる医者に尋ねた。
医者は恐れいって答えた。
「今年でもう十年になるでしょうか。彼はエスパー研究
所の事故いらい目ざめていないのです」
「わかりました。私が目ざめさせましょう。時が満ちて
いるのです」
 マニ導師は、マコトの眠っている特別ユニットベット
のそばで静かに祈り始めた。

祈りを始妬て二十分たっただろうか。
マコトの生体反応を示すCRTに変化がおこった。彼は
覚醒し始めたのだ。

 目が聞かれた。しばらく、あたりを見回していたが、
マコトはベットからむっくりと体を起こした。
目の前で祈っているマニ導師に気づき、導師の方にそろ
そろ手を伸ばした。
 マニ導師の体に、手がふれた瞬間、導師の体は消失し
た。
叫びが病室に満ちた。
 しかし、不思庫なことにマニ導師の声が部屋に響きわ
たっていた。
 「聖火はともされた」
 マコトは、先ほどまでマニ導師のいた場所にうずくま
っていた。
 「マニ導師、使命は必ず果たします」
 彼は涙を流していた。
 まわりの人々は、何かおこったのか、まったく理解で
きなかった。
マコトはマニ導師の付き人達に向かっていった。
 「ボクは、導師のなくなられる瞬間、彼の意志をひき
つぎました。マニ導師は言われました。ルサ=シティヘ
行き、そこでサイコセラフィーを受けよと。僕はその言
葉にしたがいます」
 「わかりました。それがマニ導師の遺志なのですね。
早速、手配いたしましょう」
 付き人のー人がいった。

 マコトは空(くう)に面を向けた。
他の人には見えなかったが、マニ導師の姿はマコトには
見えた。導師は霊
魂として存在していた。

マコトはルナ=シティヘ向かうため、南極ステーション
ヘ向かった。
マニ導師か、地球の地下組織「死の天使」(フイダイ)
の指導者でもあったことは
EDOを除いてあまり知られていない。

さらに。死の天使が、マニ導師が、1256年、ペルシャ
アラムート城からタイムジャンプし、連れてきたア
サシン(暗殺者集団)だとは誰も気づいていなかった。
 導師は、新しき世界の建設のために、この世界を徹底
的に破壊せよと、
アサシンに命じたのであった。
 2017年、カイロのエスパー研究所の爆発事故も、「選
民のための儀式」だったのだ。

新しき世界のための犠牲はやむをえないというのが、
死の天使(フイダイ)の思想だったのであ

 マニ導師の最期は、世界のマスコミに流された。
彼の最後の言葉は疑問符をつけて報道されていた。

 「聖火はともされた』この言葉の解釈について数多く
宗教学者が苦しんでいた。
 このデータはEDO(地球防衛機構)の情報悩にイン
プットされた。
データは処理され、EDO長官のデスクに提出された。

 このデータを見たオットーは指令をだした。
「至急、サムナーを呼びだし、月行きのシャトルトレイ
ンに乗るように命令するんだ」

(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html

遙かなる絆-ランナー第5回
(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

第5回
地球の南極空港ステーション空港ロビーで、皆がサイボーグ、ヘルム・リッカートの顔を見ている。
ヘルムの方を見なから、話しあっている人々もいる。彼は有名人であった。
ヘルムは「ロードランナー」の第一人者である。
 空港ロビーの雑踏の中で彼は座って考えていた。ここは地球の南極空港ステーション。今、まさに、
ルナ=シティ行きの『シャトルα』が出発しようとしていた。

 ヘルムは過去を思い出している。
自分が、何故ロードランナーになったのか。他に方法はなかったの
だろうか、あの時は金が欲しかったのだ。ヘルムはそう自分を納得させようとしていた。
 サイボーグ手術には、莫大な金が必要だった。彼の両親はサイボーグ公社との契約書にサインをした。
 その契約書には、サイボーグ手術の代償に、五年間公社の命ずるがままに働くように書かれていた。
さらに加えて、彼は「ロードランナー」として一定の成績をも上げなければならなかった。
 次々と開催される、昔のマラソンに相当するロードゲームで彼は走り続けた。オーストラリアー周レ
ース、南極大陸レース、赤道レース。彼は勝ち続けた。勝利の女神がまるで彼に取り付いたかのようで
あった。

 ムーン・ウェイは、地球から月へのびる、三十八万キロという長くて柔らかい管と考えていいだろう。
 20世紀後半に盛んだった地下トンネル開削技術が応用されている。
 地球と月との間に、何百もの静止衛星(中継ステーション)を浮かべ、その間を管がつながっているの
である。南極空港の出発点から、メースチングクレーターの出口まで、数億の管がジョイントされている
のである。この管の一つ一つをユニットと呼ぶ。
ユニットは伸縮性のあるPER製の外皮に被われていて、二重リングがその中に含まれている。
第一のリングは地球の自転に合わせ、回転し、第二のリングは月の公転に合わせて回転する。
 ユニットを輪切りにすれば、ほとんど地下トンネル構造とかわりはない。
 真中に情報ケーブルがあり、その上下に各々、月行きと、地球行きのシャトルトレイン軌道が通って
いる。そのまわりを作業回路が包んでいる。その外側には前述のリングがあり、一番外側はPER製の
外皮である。
 このムーンーウェイの基本アイデアは、一九七〇年代に日本の科学ジャーナリスト草下英明氏によっ
て発表されていた。
 新燃料鉱物、「エルフ13」が月で発見されたことにより、このアイデアは実現化されることになったのだ。
 ムーン=ウェイの中を、シャトルトレインが走り、月から「エルフ13」が大量に地球に流れこんでいた。
 シャトルトレインは、マッハ7でムーンウェイ内を爆走する。超電荷力推進である。
 このウェイによって、200時間で人類は月に行き来できるようになった。それこそ長い列車旅行をする
ような感覚で、月へ行けるようになったのだ。


片目のジャック、テロリストハンター、サムナーの乗り込んだエア・カーが、南極空港に到着到若した時、すでに『シャトルα』は213名の乗客を乗
せて出発したあとだった。
プランクトン=シティからここ南極空港まで「死の天使」の執拗な防害工作が続いたからだった。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/