yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールを退治させようと。

RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。
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ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールを退治させようと。
 

ロボサムライ駆ける■第54回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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■第七章 血闘場(3)

「マ、マリア」

 ロボサムライ主水は倒れて身動きできない。

「ああ…、マリア…」

「ねえさん」

 思わず、鉄が倒れた奥方マリアの方に走っていく。

 

マリアの体に触る。

その時、鉄の脇腹に何かが突き刺さった。

電磁ナイフである。

 

そのナイフは、マリアの手から鉄の腹に深々と突き刺されたのだった。

 

「うっ、ま、まさか、ねえさん」

 信じられないものを見たような鉄。

 

「そうです、今頃気がついたのですか」

 マリア、いやリキュールは、ゆっくりと起き上がる。

「今までのすべての情報はそれじゃ…」

 つぶやく鉄。膝をつき、苦しげに鉄はマリアを見る。

 

「そうです、私リキュールの方がロセンデール卿に伝えてたのです」

「そ、それじゃ、あんまり主水のだんながかわいそうだ」

マリアは、マリアとリキュールの二重人格ロボットだった。

 

「黄色いロボット風情から、そんな言葉は聞きたくないですね」

 マリアの別人格リキュールは、

「それから、私を姐さんと呼ぶのも気に食わないのです。私の嫌いな黄色いロボットからねえ」

 と言い置いて、握っている電磁ナイフのつかをぐっと押した。

 

電磁波が、鉄の体を貫く。ビクッビクッと鉄の体が動く。

恨めしげに鉄がマリアの顔を見上げる。

「ねえさん、そいつはあんましだ…」

 鉄の下半身が吹き飛んで転がる。

 

「鉄…」

 主水が唸る。

 

「夜叉丸、マリア=リキュールを倒せ」

 観客のように様子を見ていた人間の中から声が上がる。

 霊能師・落合レイモンが夜叉丸に命令していた。

「御前、わかり申した」

 

 夜叉丸が、背中から「鉾」を引き抜いて、祭壇に立っていた。

「異国の女ばら、私が退治してくれよう」

 

「ほほう、霊能師に私淑する魔道師風情が何をおっしゃる。私の腕をとくとごろうじろ」

「マリア」

倒れた主水が、とぎれとぎれにしゃべる。

 

「ふふん、気安くお呼びでないですわ、このアジアの黄色いロボット」

「お前…」

 冷や汗がしきりと主水の顔を流れ落ちる。

 

「ふふ、そのとおり。彼女リキュールは、昔から我々聖騎士の一員だったのですよ、主水くん」

 後ろから、リキュールの肩を抱き、ロセンデール卿が勝ち誇って続ける。

 

「貴様、先刻…。くそっ、背後で糸を引くのは、やはり、ルドルフ大王か」

「陛下を、呼び捨てにしないでください!主水くん」

 

 ロセンデール卿のハンサムな顔は赤くなる。

 

「そうよ。我がルドルフ大王は、ユダヤの血と黄色い血が一緒になって、白色帝国を脅かされるのを嫌っておいでなのよ」

 リキュールは吐き捨てるように言った。

 

「夜叉丸、薬剤タンクを投げろ」

 傍観していた霊媒師落合レイモンが、部下の夜叉丸に、自分の薬タンクを示した。

薬タンクは、霊媒師落合レイモンのいわば、生命維持装置である。

「ですが、御前」

 

「よい、このさいじゃ。後は何とかなろう。心柱をあやつらヨーロッパ勢に取られては後の祭りじゃ。まず、わしの体をより、あやつらを倒すことじゃ」

 

いつもは強気な落合レイモンも青い顔をしていた。

「それでは、御前、許されよ」

 

夜叉丸は、そう叫び、レイモンの背中に張り付いている薬剤タンクを掴み、神殿の最上段から舞台に向け投げ降ろす。

「やーっ」

 夜叉丸が、落合レイモンの薬をばらまいた。

 

祭壇、舞台は、薬のほこりでまいあがっり液体があたりを濡らす。

 

「ロセンデール卿、殿下、ここは私にまかせて。この夜叉丸とかと、勝負します」

 

「OK、リキュール嬢、君にまかせようか」

 ロセンデール卿はしりぞいた。

 

 夜叉丸とマリア・リキュールが対決していた。

 

「マリア・リキュールとやら、私夜叉丸の鉾は特別なのだ」

 夜叉丸は無表情に告げる。

 

「ほう、どこが特別なの。聞かせてほしいわね」

「それはこうだ」

 

 夜叉丸が、力を込めて鉾を投げる。

意外な展開だった。

「何よ、これは」

 

 目の前の出来事をマリア・リキュールは信じられぬ表情で見る。

 

鉾は、十倍に膨らみ突き抜ける。

一瞬後、マリア・リキュールの体をばらばらに吹き飛ばしていた。

 

「ま、まさか」

 ロセンデール卿が一瞬青ざめた。

 

「日本古来の鉾。この古代都市では、古来から、皆様方の霊気を集めて膨張する」

 冷徹に夜叉丸が言う。

「そうじゃ、今回はわしの薬で膨張させたのじゃ」

 

「くそ、マリア=リキュールの敵、私が貴様を倒してやる」

 主水は祭壇の所で倒れたままだ。

 

 主水は無視され、最壇上はタッグマッチの様相を呈している。

「夜叉丸よ、お前の本当の力をお見せしろ」

 

「よろしいので、落合レイモン様」

 

「よいよい、夜叉丸、少しは皆を驚かせてやれ」

 霊媒師落合レイモンは、この古代神殿の舞台で甲高い声で言った。

 

(続く)20210706改訂

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(3)

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ロボサムライ駆ける■第53回神殿祭壇で「クサナギの剣」を持つ早乙女モンドと、ゲルマンの剣を持つロセンデール卿が対決。しかし決闘中、モンドが、ロボストレスにて倒れ、モンドの妻マリアが助けようとするが。

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ロボサムライ駆ける■第53回神殿祭壇で「クサナギの剣」を持つ早乙女モンドと、ゲルマンの剣を持つロセンデール卿が対決。しかし決闘中、モンドが、ロボストレスにて倒れ、モンドの妻マリアが助けようとするが。
 

ロボサムライ駆ける■第53回

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■第七章 血闘場(2)

 

「この古代の神殿祭壇の上が勝負どころぞ」

 徳川公国、侍ロボット早乙女主水もんどは叫んでいた。

 

バイオコプターが着地し、ロセンデール卿が神殿祭壇にゆっくりと華麗に降りる。

 

「舞台にとって不足なしですねえ。早乙女くん、素晴らしい死に場所ですよ。幸運あれ。わたしはこのゲルマンの剣で戦います。我が神ゲルマンに祝福あれ」

 

 ロセンデール卿の顔も晴れ舞台での戦いであり、上気している。

 

「他のかたがたは戦いはおやめなさい。我々をごらんあれ。主水君とわたしロセンデールの決闘ですべてが決します」

ロセンデール卿の青い目がキラリと光る。

 大空洞の外から、急に稲光がひらめく。ガーンという言葉が後から響いて来た。

「主水君、貴公をこの刀のさびにしてくれましょうね。それはそれはとても名誉なことですよ。主水君」

 ロセンデール卿はゲルマンの誇りを胸に、戦いに望んでいる。

 

 電磁サーベル、ゲルマンの剣を抜き放つ。

「では、まいりましょうか、主水君」

 再び、稲光がひらめく。光が回りに満ちた。

 剣からは、またクサナギの剣とはことなる威力がある。

 

「この戦い、望むところ。クサナギの剣の力、お見せする」

 主水も、剣を抜く。ぴしーんと広場に霊気が放たれた。

 

 

「だ、旦那は大丈夫ですかね、ねえさん」

 鉄は、びびって隣にいるマリアに尋ねる。マリアは普通に戻っていた。

 

「私にだってわかるものですか」

 

 ロセンデール卿はマリアの方を見てにこりとする。

 

「主水君、君が倒れれば、レイモン殿もマリアくんも刀のさびにしてあげましょう。心して打ちかかっていらっしゃい。私は、我が聖騎士団の者ほど、腕は甘くはありませんよ」

 サーベルがビュウと唸った。

 

 ロセンデール卿は、ヨーロッパの剣技大会でもトップレベルの腕だといわれている。

 サーベルは突きが基本といわれているが、ロセンデール卿の技は単調ではない。なぎ、払うもテクニック中に含まれている。

 

 

おまけに手にするは、ゲルマンの剣。

古来より伝わる名剣。

神聖ゲルマン帝国の守り神である。

 

 戦いは思わぬ方向に進んでいる。

主水は防御の構えに入っている。ロセンデール卿が攻勢なのだ。

 レイモンにしても、マリアにしても気が気ではない。

「えーい、主水ったら、肝心なときに剣技がさえないのですから、だらしがないですわねえ、どうしたのですか」

 味方のマリアがいらだち、罵声が飛んでいた。

 

「うるさい、マリア。サーベルとの戦いに対しては、お前ほどではないんだ」

 そういった主水の頭がグラリと揺れる。

 

視覚装置がおかしくなった。

体のバランスが取れない。

 

「ウ、いかん…」

 どうしたことか、主水の持病が肝心なときに出てしまった。

 

「いかん、この大切な時に」

 足毛布博士が額に手をあてる。

 

主水の様子に足毛布博士が気付く。

 

「主水の様子いかがいたしました」

 徳川公廣が尋ねる。

「例の病気がでよった」

「えっ、こんなときに……」

 徳川公が唸る。

 

 主水に、意識の空白が襲ってくる。

「ふふつ、どうしました、どうした、主水君、私の剣技に恐れおののきましたか?」

 ロセンデール卿がニヤリと笑っている。

 

「私の腕に恐れで、体が動けなくなりましたか。弱い旗本ロボサムライですね。徳川公」

 主水はふらふらし、ゆっくりと右腕が止まってしまう。

 

 意識がフェイドアウト

 その姿のままで、主水はぎこちなくバッタリと神殿の床に倒れた。

 

が、クサナギの剣は、手に握られたままである。

「ほほっ、本当に口ほどにもない人ですね。主水君。見損ないましたよ」

 

「主水、危ないわ」

 

 後ろからマリアがすくっと立って、自分の愛刀サーベル「ジャンヌ」を手にしていた。

 

通常は、愛刀サーベル「ジャンヌ」は縮小化しマリアの背中に格納されている。いざという時に「ジャンヌ」は出現する。

 

「いい、ロセンデール卿。ヨーロッパでの恨みを、この日本で晴らします」

 マリアの顔はキッと厳しくなっている。

 

「おやおや、麗人マリア君。美しい愛の世界の姿ですねえ。フクシュウシン?! ふふっ、が、所詮、貴君は女ロボットです。現在のヨーロッパチャンピオンの私を倒せるとお思いですか。傲慢の極みですね。

 

ふふっ、おまけにこれは、ゲルマンの剣ですよ。おわかりですか? ねえ、麗人マリア君」

 

 

「それは、勝負してみてからいってほしいですわね。ロセンデール卿」

 

ロセンデール卿はあることに気付く。

「それは、、、そうだ、マリア君、私の目をよく見てごらんなさい」

 

 ロセンデール卿が声高かに叫んでいた。悪魔の表情である。

 

「いかん、マリア。ロセンデールの目を見るな」

 主水はロセンデールの狙いに気付く。

 

ころがり、のたうつ主水は、マリアに叫んでいるつもりだ。

が、いかんせん、その声は今マリアの耳には届いていない。

 

「まずいのう。マリアの別の人格が浮上するかもしれん」

 戦いの様子を見ていた徳川公がポツリとつぶやいた。

 

そう、マリアは別人になりつつあるのだ。

 

観戦している人々から、どよめきが起こる。

 

「別の人格ですと」

今度は足毛布博士が尋ねる。

 

「そうなのです。マリア=リキュール=リヒテンシュタインは二つの心を持つロボットなのです。

もう一つの心はリキュール。マリアの肉体にあるもう一人の人格」

 徳川公はボソボソとしゃべる。

「こんな戦いの時に…」

 

 ロセンデール卿の剣が、あっという間にジャンヌの剣をたたきわり、続いてマリアの胸を貫く。

マリアは「うっ」

 と叫ぶ。

 

「マ・リ・ア」

 主水も叫んでいる。

 ロセンデールは、ゲルマンの剣を、瞬間にマリアから抜き取る。

 

 どっと祭壇上に倒れるマリア。

剣はマリアの体の中枢をついていた。

 

「ふふん、マリア君も口ほどにもありませんねえ。手応えがありませんねえ。折角の、こんな晴れ舞台なのにねえ」

 

 ロセンデール卿はゲルマンの剣をビュウと振った。

 

(続く)20210705改訂

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2)

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ロボサムライ駆ける■第52回歴史をかえる「クサナギの剣」が出現。 その剣を抜いて、ロセンデール卿と戦えと 徳川公、アシモフ博士が言う。「運命の七柱」なら抜ける。が早乙女モンドの妻マリアが急変。

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■第七章 血闘場(1-2)

 

「クサナギの剣じゃ。あれを持つ者は、歴史を変革できると言われておる」

 落合レイモンが唸った。

 

「心柱があれを出現させよったか」

 レイモンはしきりに感心している。

 

「クサナギの剣をつかうのは、ロボットでも構わぬのでございますか」

 徳川公が、落合レイモンに心配そうに尋ねる。

 

「ロボット、人間の区別はない」

「主水、どうじゃ。あれを抜いて、ロセンデール卿と戦え」

 徳川公廣が言う。

 

「が、お上、もし拙者に抜けますでしょうか」

ロボサムライ早乙女主水がたづねる。

 

「あの剣が出現せしこと、まさに、お主が選ばれし者という証拠よ」

 祭壇の剣を主水は触ろうとした。逆に剣の方から近づく感じがした。

 

「これは一体…」

 主水はその感覚に驚いてしまった。

 

ひょっとして私のICチップには、秘密が。

あの運命の七つの星とかいう、

意味不明の言葉が何を意味しているのか。剣にもう一度触ることが恐かった。

 

「さあ、もう一度、早く、刀を引き抜いてみよ、主水」

 足毛布アシモフ博士が呼びかけていた。

 

『俺からの心からの贈り物を、主水恐れることはない。そちが、『運命の七柱』の一人ならばな…』

 

 ゆっくりと主水はクサナギの剣に触る。

手が剣に巻き込まれた。

 

そんな気がした。剣と主水の手が一体化していた。

 

 ずぶりと、剣は祭壇から抜かれる。

 

その瞬間、剣からまばゆい光が射した。

「おう…」

 ため息ともつかぬ声が見守る人々から漏れた。

 

 主水はクサナギの剣を高々と持ち上げた。

主水の胸の真ん中がキラリと光った。

 

「早乙女主水、このクサナギの剣にて戦いもうす」

 

 同じ時、知恵の胸にも同じようにキラリと光った。

「こ、これは…」

 

知恵は回りを見渡す。誰も気付いていないようだ。

「ワタシも運命の七柱の一人なんか…」

 

「いや、旦那の晴すがた、かっこいいねえ、ねえさん」

 が、鉄がみた奥方マリアの眼は異常になっている。

 

マリアは黙ったままだった。

鉄は何かそら恐ろしいものを見た気になって、目をそらした。

 

このマリアの急なる変貌には、誰も気付いてはいない。

 

 

 

(続く)

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)

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ロボサムライ駆ける■第51回近畿新平野の中心が陥没、地下空洞から上空が。徳川空軍飛行船が降下してきていた。神聖ゲルマン帝国のバイオコプターに乗るロセンデール卿に、早乙女モンドが挑む。

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ロボサムライ駆ける■第51回近畿新平野の中心が陥没、地下空洞から上空が。徳川空軍飛行船が降下してきていた。神聖ゲルマン帝国のバイオコプターに乗るロセンデール卿に、早乙女モンドが挑む。
 

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■第七章 血闘場(1)

 

「だんな大丈夫ですかい」

 なつかしい声がロボサムライ早乙女主水の耳元に響いた

 「びゅんびゅんの鉄」が急にモンドの前に現れていた。

 

「ありゃ、徳川の殿様もおられる。これりゃ、殿様は誘拐されたんじゃなかったんですかい」

「今、解放されたのじゃ」徳川公が答える

 

 

「じゃ、あっしは、今から殿様を介抱カイホウしますってね」

 笑いをとろうとした鉄だったが、まわりの白い目に気付く。

そういう雰囲気ではない。

「おまえ、どうやってここへ」

 

「へへぇ、だんな、上空をご覧なさいよ」

 徳川空軍の飛行船が、主水の視界を占めていた。

地下空洞の天上部が抜けて、空が見える。

「おおっ、心強いぞ」

 

 徳川公国空軍飛行船「飛天」及び「高千穂」号が降下してきていた。

 

「この殿様がね、心配して後からこれで追えっておっしゃったんで。おまけにロボット旗本組も乗せてきやしたぜ。いやっ、殿様って先見の明がおありだ。が、敵に誘拐されちまってのがどうもね」

 

「もう、鉄さんたら、いいかげんにしなさい。ああっ、主水殿、大丈夫なの」

 モンドの奥方マリアも続いて降りてきた。主水の腕の中に飛び込んで来る。

 

 大きな空洞がこの地下古代都市のうえにうがかれていた。

「おお、あんな大きな穴がいつできたのじゃ」

 主水が抱き着くマリアに尋ねた。

 

「私達の方もびっくりしたわよ。急に近畿新平野の中心が陥没するのですもの」

 

「この飛行船のレーダーが、とらえやしてね。早速に駆け付けてきたってわけでさあ」

「ところで、ロセンデール卿はどこなのですか」

 マリアが尋ねた。彼女マリアの緑の瞳は復讐に燃えていた。マリアはロセンデール卿との因縁があるのだ。

 

「先刻、逃げ出しおったのじゃ」

 そういう二人の前に、上空に、神聖ゲルマン帝国のバイオコプターが現れている。背後には聖騎士団が続々と現れていた。

 

「主水君よ、我々は逃げた訳ではありませんよ。君たちが雁首をそろえて我々の手にかかるために、わざわざ、古代都市が現れるのを待っていたのですよ」

 

 バイオコプターから、ロセンデール卿の顔が見えた。

「ロセンデール卿、ひきょうだぞ。一対一の勝負だ。降りて来い」

 

「ふふん、モンド君。君たち日本のロボット風情に卑怯物と呼ばれるのも豪気ですね。その挑戦にのりましょう」

 

「よろしいですか。他の方は手出ししないでください」

 ロセンデール卿は同じバイオコプターにいるクルトフら家臣団に告げる。

 

「しかし、殿下、それは」

 クルトフが難色を示す。

 

「よろしいのです。私のいうようにしてください」

「もしか、お負けになれば……」

 

「ふふ、クルトフ君、君は何をいうのですか?

そんなわけがないでしょう、この実力気力十分な私が、こんな田舎の日本のロボットに負けるなんて。何をおっしゃているですか。気分でもお悪いわけですか?」

クルトフはほほを赤らめる。

 

「主水どの、大丈夫ですか」

 反乱ロボットの長、山本一貫が心配そうにいう。

 

「まかされよ、この舞台は、このロボサムライ徳川直参旗本、早乙女主水の一世一代の見せ場でござる」

 

 ロセンデール卿が、バイオコプターから降りて来た。

 

 が、シュトルフが率いる後続のバイオコプター部隊は攻撃の間をはかっている。

「クルトフ様、念には念を」

 シュトルフの声がクルトフに聞こえる。

 

「シュトルフ君、心強い言葉ですねえ。後詰めは頼みましたよ」

「お任せあれ。クルトフ様」

 

「主水よ、神殿の中に隠れている剣を取るのだ」

 足毛布アシモフ博士が叫んでいた。足毛布博士の表情が急変していた。

 

「よいか、主水。お前のICチップは特別に選ばれたロボットにしか使われないチップだ」

 

『そうか、足毛布博士。あやつが、早乙女主水が、我々の探している「運命の七柱」の一人のロボットなのか』

 急に心柱が足毛布博士に言葉を投げていた。

 

「そうです。みはしら様。あの主水が古来から伝わる伝説の石を、心に使ったロボットの一人なのです」

 足毛布博士が丁寧に答えた。

 

『そうならば、私めも手助けせねばなるまい』

心柱が言葉を続けた。

 

 神殿の床の真ん中から、棒のようなものが突出する。

「おおっ、あれは一体」

 人々が驚く。

 

(続く)

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ロボサムライ駆ける■第50回■早乙女モンドの生みの親アシモフ博士が叫ぶ「裏切り者め。主水。徳川公国の侍ロボットになりさがり。お前はNASA宇宙旅行に開発されたロボット」

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ロボサムライ駆ける■第50回■早乙女モンドの生みの親アシモフ博士が叫ぶ「裏切り者め。主水。徳川公国の侍ロボットになりさがり。お前はNASA宇宙旅行に開発されたロボット」
 

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■第六章 古代都市(5)

「ええっ、足毛布アシモフ博士とおっしゃいましたか。博士はご無事でございましたか」

ロボサムライ早乙女主水は喜ぶ。

「無事も無事よ。主水殿も知らぬらしいのう」

 いい澱む落合。

「まあ、いたしかたがない。教えてやるか」

 

「何でございますか、そのような奥歯にものの挟まったような言い方、お止め下され」

 

「よいか、主水殿。この地下都市発掘に関するプロジェクトで、地下ロボット動員策は、だれが提唱したと思うのじゃ」

「ま、まさか、足毛布博士ということはありますまい」

「ほほ残念ながらのう、足毛布博士なのじゃ」

 主水の人口体液が急激に冷却した。

 

「まさか、そのようなことが…」

といいつつも、やはり山本たちが言っていたには本当だったのか。まさか、生みの親である足毛布博士がそれほど悪辣だとは思っていなかった。

 

「足毛布博士はロボットに恨みを抱いておられるようじゃな。かつて我が子のようにかわいがったロボットに逃げられてのう。その名は…」

 

 レイモンはじろりと主水を見る。

「レイモン様、あとは言われなくてもわかります。私と言う訳ですか」

 取り乱す主水。

 

「そうじゃ、霊能力者たるレイモンにとって、すべては読みとれるのじゃ。ほほ、お前が、足毛布博士のトラウマ(精神的外傷)なのじゃ。それゆえ、お前に対する憎しみも強かろうの。そう思うじゃろう、夜叉丸」

傍らにいる夜叉丸に言う。

 

「さようでございます。主水殿、気をつけられよ。足毛布博士は、今普通の精神状態ではござらぬ」

 

 主水は、神殿の上にいる人々の群れの中に足毛布博士を見つける。

「足毛布博士」

 

 主水はかけよるが、

「お前の顔などみとうない」

 博士が顔をのけぞらす。

 すねているのか、と主水は思ったが、博士の言葉が急に襲ってきた。

 

「裏切り者め。主水。俺を裏切って、今は何か、徳川公国の侍ロボットになりさがりよるか。よいか主水、お前はNASA宇宙旅行用に開発されたロボットよ。 徳川公国の旗本ロボットになろうと思っても、所詮、水と油。お前のボディもICチップもほぼアメリカ合衆国製じゃ。アメリカと日本のハイブリッドなのじゃ。それがお前は徳川公国の侍、旗本になりたいじゃと。何を考えておるのじゃ。どうじゃ、主水、体の具合がおかしいじゃろう」

博士は喚く。

 

「……」

 主水は図星をつかれた。なぜなのだ。体が不調なことをなぜ知っているのだ。まさか、そうプログラミングされていたわけでもあるまい。

 

「おかしいはずじゃ、体がいうことをきかなくなる時があろう」

 どんどん、声をあらげる博士。完全に自分の言葉に酔っているようである。

「……」

 どうしたらよいのだ。この場合の選択枝はなにだ。しかし、主水には解答はない。

 

「それはロボット・ストレスじゃ。アメリカの体に日本の心を宿したからのう。いくら頭脳強化剤を与えたところで、機械工学で解決できるものではないのだ。ロボット生理学やロボット心理学の世界でしか解決できぬのだ。どうじゃ、すべて図星であろうが」

 がなる博士に、もう手の打ち様もない主水だった。

 

「主水、気にするでないぞ」

新たな声がやわらかに主水を包む。

別の声だ。

 

 続いて、徳川家当主、徳川公廣が現れていた。

徳川家康そっくりの顔を見ると主水も安心する。

 

「これはお上。ご無事でしたか」

 主水は膝を落とした。

「貴公は我が徳川公国のために働いておる。それはすなわち日本にたいして役に立っているということじゃ。足毛布博士の言うことなど気にしなくてよい。よいか、足毛布博士は、お前を再び我が手の者とし、NASA宇宙探査用ロボットとして、宇宙へ飛ばそうとしておるのじゃ」

 

「宇宙へですと」

 

 新たな情報で眼が回る思いの主水だった。

 

「よいか、日本を狙っているのが、神聖ゲルマン帝国のルドルフ大帝なのじゃ。ルドルフは霊戦争の原因が宇宙空間にある「冷子星れいしせい」と考えておるらしい。この「冷子星」へ調査部隊を派遣する計画のようだ」

 

 「冷子星」は地球監視衛星『ボルテックス』を作った種族が支配する星である。地球監視衛星『ボルテックス』は、世界を滅ばしたいわゆる「霊戦争」のあとに存在している。

 

 主水は急に切り札を思い出した。

この一つで、アシモフ博士に切り返すことができる。

 

「足毛布博士、あなたのお宅にユダヤダビデの星が落ちておりましたが」

 

「何と、どういうことかな。足毛布博士」

 徳川公が詰問する。

「お前は邪宗の徒なのか」

「それは……」

 

 今度は足毛布博士が言い淀んだ。

 その時、新たな人物が、主水の前に現れていた。

 

 

(続く)

■ロボサムライ駆ける■

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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SYその腕もて闇を払え(1980年作品)クロスは、我妻と子を奪われコーヘン財閥に復讐を誓う。20年後隕石が落下、地球生態系が変化、疫病が。デスゾーンの研究中の娘カレンを助けにクロスが呼び戻される。
この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n3784gq/7/

 

その腕もて闇を払え第7回 細菌を植え付けられクロスは20年前に火星で地獄船に助けられた事を思いだす。結果が右のサイボーク腕だ。デスゾーンに入る探査トレーラーに乗る。灰色の空と硫酸焔があがる。
 

その腕もて闇を払え第7回

(1980年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

■2071年10月、細菌研究所内。

「いや。全然ダメだったようだ」

「そして、この俺もこのような体になるというわけだな」

「そうだ。ここに内蔵されてあるサンプルの死体と同じようにな」

クロス・クライストは冷汗が流れていた。

 

「それじゃ、君に病菌を注入する」

 クロスにはまたあの時の悪夢がもどってくるようだった。

 

■2050年、火星。マリナ=シティ郊外。

 

「頼む、助けてくれ」

 クロス・クライストは火星嵐の中でこつ然と現われたアイパッチをした男に頼みこむ。男の背後にかすかに船影がみえる。

 

クロス・クライストは倒れて男の足をつかんでいる。

 

「どうやら誰かにおわれているようだな」

「そうだ。コーヘン財閥の奴らだ」

「コーヘン財閥か」 

 

「その通りだ」

クロスが答えると、男は少し考え込んでいた。

 

「ただで助けるわけにはいかんな。お前は大変な奴らを相手にしたな。コーヘンが相手ではな。じゃあ助ける代償に何をくれる」

 

「ダイヤじゃどうかね」

 

クロスは服から隠し持っていた宝石袋をとりだした。

 

「金……」

あらゆる物質をクロス・クライストはとり出す。男はすべてを拒否する。

 

「くそっ、それじあ、お前、何をやったら俺を助けてくれると言うんだ」

 男はニヤッと笑った。

「俺の欲しいのは、お前の右腕だ」

「何だと」

「正確に言うと、右手と右腕だ」

 

「お前は一体」

 

こんな所にいる男。宇宙船。それにこの男の姿。

クロス・クライストは気がつく。

 

 「くそっそうか、わかったお前達は地獄船か」

 

 「そうだ。さっしの通り。俺は地獄船の船長さ。キャプテン=リードだ」

 

 地獄船は。星々をまわり、生さている人間の生体を切り売りする商売をなりわいとして

いる奴らである。人造人間たち、サイボーグは金もうけをして、体の1部を本物の生体に

つけかえているのだ。いわぱ人肉商売じんにくしょうばいだ。

 

「今な、どうしても。クライアントの要望に対する生体の右腕が一本足りんのさ。もう時間がない。納入期限が迫っている。そんな時、お前が追われているのがレーダーにはいったので着陸した。さあどうする。命のすべてか。それとも右腕だけにするかね」

 

「くそっ、足もとをみやがって」

「ふふっいや、手もとを見ているのさ」

宇宙帽の全面ヘッドセットを通して、キャプテン=リード船長がニヤリと笑っているのがわかった。

 

「もちろん、失った右腕のかわり、すばらしいサイボーグ義手をつけてやろう。それにこ

の火星から、というよりも、コーヘン財閥の手の届かない外宇宙へ連れだしてやるぜ」

 

クロスは即答する。

「わかった。しかたがない。その条件をのもう」

 

■地獄船のキャプテン・リードのおかげでかろうじて、クロスは火星から逃れる事ができた。

右腕というたっとい代償をはらって。

 

クロスは地獄船で外宇宙へ出かけ、地獄船でしぱらくの間、汎用員として働いていた。

地獄船の基地の一つでサイボーグ手術を受け、新しい能力を授けられてにいた。

 

時が流れた。宇宙空間での生活は長いようでもあり、短かいようでもあった。

 

■2071年、10月デス=ゾーン境界線近郊。

 

デス=ソーンとこの世界をつなぐ橋がある誰もこの橋を渡って帰ってきた者がない。

人呼んで、「葬送の橋」。

 

しかし車から望遠鏡をのそいている男にとっては「希望の橋」だった。

 

デス=ゾーン境界監視塔が見え始める。マーカス大佐はエアーカーのスピードを心持ちゆるめた。せまいコックピットの中でクロス・クライストは長い間ゆられて来たのだ。

 

クロスは、細菌にやられて、この目的地までどうやら生きながらえてきたわけだった

 

ここデス=ゾーンがクロス・クライストの終焉の地だとしても、45才の人生どうってことはなかった。

ここで。俺の生きてきた価値が始めてわかるかもしれんとクロス・クライストは思った。

 

デス=ゾーンの空はどんより曇り始め、鳥はまったく上空を飛んでいない。草木さえもなく、不毛の地だ。

 

 「デス=ゾーンにやってきた」

 マーカス大佐、クロス・クライストの守護神であり。相棒でもあった男がつぶやいた。

 

ここはクロスの死への第一歩であり、後戻りはできない。

「汚染予防服をつけなおしてくれ」

マーカスに言われて、クロス・クライストは後部シートの装備パックをとり、服につけた。マーカスはあの細菌研究所から予防服をつけている。なぜなら、クロス・クライストはすでに病気デロスに汚され、身体が変化し始めているのだ。

 

モレノ飛行場からこのデスーソーンまでは100キロの距離があった。細菌研究所からモレ

ノ飛行場、それからココ、デスゾーンだ。

 

 汚染地域、すなわちデスゾーンは、この国アメリカの中央部を占め、広さ。およそ100キロ平方である。

 

 現在は地球連邦軍がこの地域への交通を完全に遮断している。

 

 我々の世界とデス=ゾーンは大きな溝で切り離されている。

その溝には濃硫酸が流されている。

溝よりも海という感じだ。幅は平均的に1キロの幅で、二つの世界の境界線となっ

ている。

 

こちら側には、20キロごとに監視塔が立ち並らび、その中には汚染防止服に身をかためた

連邦軍の兵士達か、侵入者及び脱出者はないかと見張っている。

 

ライン上500メートル上空にはヘリコプターや、無人偵察機が旋回し、さらにもっと上空の宇宙空間には静止衛星が打ち上げられ、この地域の監視を行なっている。

 

侵入飛行物体はミサイルで攻撃される。03年、地球に落下したイン石は現在

医学で助けられない病気デロスを蔓延した。それはこのイン石の落下地域デスーソーン

からである。

 

「さあ、いよいよだそ」

マーカスはエアーカーのエンジンを切った。

 

クロス・クライストはうなづき、降り。監視所へ向かって歩いていく。

監視員は二人いた。二人共、地球連邦軍の兵士で30歳代の若い男だ。

 

 だしぬけにクロス・クライストがドアを開けて入っていった時、クロスの顔色を見て。二人の顔には驚きの表情があらわれていた。

 

 「マーカス大佐ですね、お待ちしておりました」

 

防疫服をぬいだマーカス大佐と二人は握手した。

 

しかしクロス・クライストは防疫服を着たままですわっている。

「彼が志願者なのですね」

「そうだ」

「トレーラーは用意してあります」

「トレーラーつて、何だ」

マーカスが言った。

「1ヵ月に一度、我我、デスーソーンの中を探知探索するために、VTRカメラや測定機器を多数つみこんだ卜レーラーをオートロボット操置で送り込んでいる。もし途上で、デス=ゾーンの住人の死体があれば、マニュピュレーターの操作により搬入する。期間3日間、デス=ゾーンを走りまわったあと、自動でこの監視所へ帰ってくる」 

地球連邦軍の兵士の金髪の男がいった。 

 

「デス=ゾーンの人間はその調査トレーラーには干渉しないのかね」

 

「調査トレーラーが入ってきていること自体を、デスゾーンに生存している人間が、生物が理解しているかどうか不明なのだ」

もう一人の男がいう。

 

 「今回、このトレーラーは君クロスの運転にまかせる」

 

 調査トレーラーは全長30m。重装備だ。

8輪独立全輪駆動走行タイプである。一種の動く装甲車といった方が適切だろう。

 

 「う雨だ。まずいな」

 

 監視塔の窓から見ると、雨が降り出し、濃硫酸は雨水に反応し、発熱作用をおこしてい

る。熱水がとびはねている。湯気がもうもうとあがっている。

 

「必ずかえってこいよ。娘のカレンを連れてな」

再び防疫服を着たマーカス大佐がクロス・クライストの手をにぎった。

 

「気をつけて」残りの2人が叫んだ。

調査トレーラーのエンジンをスタートさせる。

 もうもうたる溝からはねあがる湯気がむこうの景色をうっすらとしたものにしていた。橋は約1.5キロの長さがある。

 

このトレーラーの時速は約30キロであり、約8分かかる計算である。

 

■最初の2分は何もおこらなかった。

それからだった。

 

 急に車体が右にきしみ。コックピットのボディ右壁におもい切りたたきつけられた。絶

対安全な調査トレーラーか。クロス・クライストは笑った。

 

 エンジンもなぜかストップしている。

 

車体は右へ右へと少しずつかたむいていく。コックピットの座席が急に飛び出した。

急に左ハッチが開く。クロスは車から外へほおり出された。瞬間。外部のアンテナヘぶらさがっていた。

 

 アンテナはクロスの体の重みでゆっくりと下へかしいでいく。

 

トレーラーぱ後の部分はかろうじて橋の右側の側壁にひっかかり。前の部分は橋の壁がやぶれていて。濃硫酸の川の上へ突き出している。橋の下部から川まで高度差は約100mであり、濃硫酸に反応した雨滴がはねかえってクロスのブーツを侵食していた。

 

 再び、車がゆっくりとかたむいていく。座席の内容物が、はずみでハッチから川の中へ

落ち、無気味な音をたてて、煙をあげ、溶解し、川に飲まれていく。

 

 クロスは思いきり、体を前後にふり、いきおいをつけ、橋の上へとびあがろうとした。が

二振り目で、アンテナが真中から折れた。体は空を舞った。

 

その腕もて闇を払え第7回

(1980年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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SYその腕もて闇を払え(1980年作品)クロスは、我妻と子を奪われコーヘン財閥に復讐を誓う。20年後隕石が落下、地球生態系が変化、疫病が。デスゾーンの研究中の娘カレンを助けにクロスが呼び戻される。
この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n3784gq/7/

 

その腕もて闇を払え第7回 細菌を植え付けられクロスは20年前に火星で地獄船に助けられた事を思いだす。結果が右のサイボーク腕だ。デスゾーンに入る探査トレーラーに乗る。灰色の空と硫酸焔があがる。
 

その腕もて闇を払え第7回

(1980年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

■2071年10月、細菌研究所内。

「いや。全然ダメだったようだ」

「そして、この俺もこのような体になるというわけだな」

「そうだ。ここに内蔵されてあるサンプルの死体と同じようにな」

クロス・クライストは冷汗が流れていた。

 

「それじゃ、君に病菌を注入する」

 クロスにはまたあの時の悪夢がもどってくるようだった。

 

■2050年、火星。マリナ=シティ郊外。

 

「頼む、助けてくれ」

 クロス・クライストは火星嵐の中でこつ然と現われたアイパッチをした男に頼みこむ。男の背後にかすかに船影がみえる。

 

クロス・クライストは倒れて男の足をつかんでいる。

 

「どうやら誰かにおわれているようだな」

「そうだ。コーヘン財閥の奴らだ」

「コーヘン財閥か」 

 

「その通りだ」

クロスが答えると、男は少し考え込んでいた。

 

「ただで助けるわけにはいかんな。お前は大変な奴らを相手にしたな。コーヘンが相手ではな。じゃあ助ける代償に何をくれる」

 

「ダイヤじゃどうかね」

 

クロスは服から隠し持っていた宝石袋をとりだした。

 

「金……」

あらゆる物質をクロス・クライストはとり出す。男はすべてを拒否する。

 

「くそっ、それじあ、お前、何をやったら俺を助けてくれると言うんだ」

 男はニヤッと笑った。

「俺の欲しいのは、お前の右腕だ」

「何だと」

「正確に言うと、右手と右腕だ」

 

「お前は一体」

 

こんな所にいる男。宇宙船。それにこの男の姿。

クロス・クライストは気がつく。

 

 「くそっそうか、わかったお前達は地獄船か」

 

 「そうだ。さっしの通り。俺は地獄船の船長さ。キャプテン=リードだ」

 

 地獄船は。星々をまわり、生さている人間の生体を切り売りする商売をなりわいとして

いる奴らである。人造人間たち、サイボーグは金もうけをして、体の1部を本物の生体に

つけかえているのだ。いわぱ人肉商売じんにくしょうばいだ。

 

「今な、どうしても。クライアントの要望に対する生体の右腕が一本足りんのさ。もう時間がない。納入期限が迫っている。そんな時、お前が追われているのがレーダーにはいったので着陸した。さあどうする。命のすべてか。それとも右腕だけにするかね」

 

「くそっ、足もとをみやがって」

「ふふっいや、手もとを見ているのさ」

宇宙帽の全面ヘッドセットを通して、キャプテン=リード船長がニヤリと笑っているのがわかった。

 

「もちろん、失った右腕のかわり、すばらしいサイボーグ義手をつけてやろう。それにこ

の火星から、というよりも、コーヘン財閥の手の届かない外宇宙へ連れだしてやるぜ」

 

クロスは即答する。

「わかった。しかたがない。その条件をのもう」

 

■地獄船のキャプテン・リードのおかげでかろうじて、クロスは火星から逃れる事ができた。

右腕というたっとい代償をはらって。

 

クロスは地獄船で外宇宙へ出かけ、地獄船でしぱらくの間、汎用員として働いていた。

地獄船の基地の一つでサイボーグ手術を受け、新しい能力を授けられてにいた。

 

時が流れた。宇宙空間での生活は長いようでもあり、短かいようでもあった。

 

■2071年、10月デス=ゾーン境界線近郊。

 

デス=ソーンとこの世界をつなぐ橋がある誰もこの橋を渡って帰ってきた者がない。

人呼んで、「葬送の橋」。

 

しかし車から望遠鏡をのそいている男にとっては「希望の橋」だった。

 

デス=ゾーン境界監視塔が見え始める。マーカス大佐はエアーカーのスピードを心持ちゆるめた。せまいコックピットの中でクロス・クライストは長い間ゆられて来たのだ。

 

クロスは、細菌にやられて、この目的地までどうやら生きながらえてきたわけだった

 

ここデス=ゾーンがクロス・クライストの終焉の地だとしても、45才の人生どうってことはなかった。

ここで。俺の生きてきた価値が始めてわかるかもしれんとクロス・クライストは思った。

 

デス=ゾーンの空はどんより曇り始め、鳥はまったく上空を飛んでいない。草木さえもなく、不毛の地だ。

 

 「デス=ゾーンにやってきた」

 マーカス大佐、クロス・クライストの守護神であり。相棒でもあった男がつぶやいた。

 

ここはクロスの死への第一歩であり、後戻りはできない。

「汚染予防服をつけなおしてくれ」

マーカスに言われて、クロス・クライストは後部シートの装備パックをとり、服につけた。マーカスはあの細菌研究所から予防服をつけている。なぜなら、クロス・クライストはすでに病気デロスに汚され、身体が変化し始めているのだ。

 

モレノ飛行場からこのデスーソーンまでは100キロの距離があった。細菌研究所からモレ

ノ飛行場、それからココ、デスゾーンだ。

 

 汚染地域、すなわちデスゾーンは、この国アメリカの中央部を占め、広さ。およそ100キロ平方である。

 

 現在は地球連邦軍がこの地域への交通を完全に遮断している。

 

 我々の世界とデス=ゾーンは大きな溝で切り離されている。

その溝には濃硫酸が流されている。

溝よりも海という感じだ。幅は平均的に1キロの幅で、二つの世界の境界線となっ

ている。

 

こちら側には、20キロごとに監視塔が立ち並らび、その中には汚染防止服に身をかためた

連邦軍の兵士達か、侵入者及び脱出者はないかと見張っている。

 

ライン上500メートル上空にはヘリコプターや、無人偵察機が旋回し、さらにもっと上空の宇宙空間には静止衛星が打ち上げられ、この地域の監視を行なっている。

 

侵入飛行物体はミサイルで攻撃される。03年、地球に落下したイン石は現在

医学で助けられない病気デロスを蔓延した。それはこのイン石の落下地域デスーソーン

からである。

 

「さあ、いよいよだそ」

マーカスはエアーカーのエンジンを切った。

 

クロス・クライストはうなづき、降り。監視所へ向かって歩いていく。

監視員は二人いた。二人共、地球連邦軍の兵士で30歳代の若い男だ。

 

 だしぬけにクロス・クライストがドアを開けて入っていった時、クロスの顔色を見て。二人の顔には驚きの表情があらわれていた。

 

 「マーカス大佐ですね、お待ちしておりました」

 

防疫服をぬいだマーカス大佐と二人は握手した。

 

しかしクロス・クライストは防疫服を着たままですわっている。

「彼が志願者なのですね」

「そうだ」

「トレーラーは用意してあります」

「トレーラーつて、何だ」

マーカスが言った。

「1ヵ月に一度、我我、デスーソーンの中を探知探索するために、VTRカメラや測定機器を多数つみこんだ卜レーラーをオートロボット操置で送り込んでいる。もし途上で、デス=ゾーンの住人の死体があれば、マニュピュレーターの操作により搬入する。期間3日間、デス=ゾーンを走りまわったあと、自動でこの監視所へ帰ってくる」 

地球連邦軍の兵士の金髪の男がいった。 

 

「デス=ゾーンの人間はその調査トレーラーには干渉しないのかね」

 

「調査トレーラーが入ってきていること自体を、デスゾーンに生存している人間が、生物が理解しているかどうか不明なのだ」

もう一人の男がいう。

 

 「今回、このトレーラーは君クロスの運転にまかせる」

 

 調査トレーラーは全長30m。重装備だ。

8輪独立全輪駆動走行タイプである。一種の動く装甲車といった方が適切だろう。

 

 「う雨だ。まずいな」

 

 監視塔の窓から見ると、雨が降り出し、濃硫酸は雨水に反応し、発熱作用をおこしてい

る。熱水がとびはねている。湯気がもうもうとあがっている。

 

「必ずかえってこいよ。娘のカレンを連れてな」

再び防疫服を着たマーカス大佐がクロス・クライストの手をにぎった。

 

「気をつけて」残りの2人が叫んだ。

調査トレーラーのエンジンをスタートさせる。

 もうもうたる溝からはねあがる湯気がむこうの景色をうっすらとしたものにしていた。橋は約1.5キロの長さがある。

 

このトレーラーの時速は約30キロであり、約8分かかる計算である。

 

■最初の2分は何もおこらなかった。

それからだった。

 

 急に車体が右にきしみ。コックピットのボディ右壁におもい切りたたきつけられた。絶

対安全な調査トレーラーか。クロス・クライストは笑った。

 

 エンジンもなぜかストップしている。

 

車体は右へ右へと少しずつかたむいていく。コックピットの座席が急に飛び出した。

急に左ハッチが開く。クロスは車から外へほおり出された。瞬間。外部のアンテナヘぶらさがっていた。

 

 アンテナはクロスの体の重みでゆっくりと下へかしいでいく。

 

トレーラーぱ後の部分はかろうじて橋の右側の側壁にひっかかり。前の部分は橋の壁がやぶれていて。濃硫酸の川の上へ突き出している。橋の下部から川まで高度差は約100mであり、濃硫酸に反応した雨滴がはねかえってクロスのブーツを侵食していた。

 

 再び、車がゆっくりとかたむいていく。座席の内容物が、はずみでハッチから川の中へ

落ち、無気味な音をたてて、煙をあげ、溶解し、川に飲まれていく。

 

 クロスは思いきり、体を前後にふり、いきおいをつけ、橋の上へとびあがろうとした。が

二振り目で、アンテナが真中から折れた。体は空を舞った。

 

その腕もて闇を払え第7回

(1980年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/