yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

クリス・リックマンという名の箱船第6回●ラグーン市にはすでに死がまき散らされていた。私は食糧運搬車で脱出しょうとした。

クリス・リックマンという名の箱船●全宇宙の観察者、超生命体達は、対象である下等生物のいつ意識を全開させてみる実験をした。地球人類の生き残り1人は最適解をだすだろう。
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クリス・リックマンという名の箱船第6回●ラグーン市にはすでに死がまき散らされていた。私は食糧運搬車で脱出しょうとした。
 

 

クリス/リックマンという名の箱船第6回

(1976年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

やがてラグーン市に死が静かに訪ずれるだろう。

 

センターからの食糧を送らなけれぱ、彼らは餓死する。それだけでも本当はいいのだ。

しかし、それは私の心が許さなかった。

 

私の涙は、恐しいからではない。嘆かわしいからだ。

昔の私にそっくりの人間達を見るに耐られなかったのだ。

 

私はこのラグーン市をゆっくり歩きながら「死の細菌」をばらまいてきたのだ。私の杖の先

から、少しずつ、目に見えない細菌が各所にばらまかれていたのだ。

 

ラグーソ市の機構ではこの細菌に対する免疫体を作りあげる事はできないはずだ。

私は再び市庁を訪れた。

 

もちろん、市長はいない。恐ろしい者を見る目付きでベームがいやいやあいさつに出て

きた。

 

「見るべき所は全部見せていただきました。

別に不審な所は見当りません。センターからは通常通り、食禄が送り込まれるでしょう」

私はゆっくりとペームにおじぎをした。

ベームは食糧が送り込まれると聞き、一応安心しているようだった。

 

私は市庁から出た。

しかし、易々と私をラグーン市から出してはくれないだろう。

 

パウンティハンター(賞金かせぎ)を市内へ呼び入れる事も考えられる。どんな手を

打ってくるのかわからなかった。

 

私は何しろ、ラグーン市と侵略者との間の黄金像の事を知っているのだから。

ラグーン市はすでに私に対する新たな対策をとり始めているに違いない。

考え込んでいる私の目の前に黒い影が急激に近づいてくる。

 

ビーグルだ。

それも先刻のデルのビーグルが私に向かって暴走してくる。

 

車体が私の体にふれそうになった一ほ、杖を私はジェット噴射させた。すんでの所で私

はよける事ができた。

 

チェニックの端が切れて飛んでいた。ビーグルは前の建物をよけ切れず、窓の中心へ突

き込んでいた。

 

 

ビーグルは燃えあがっていた。中にいたデルは消滅しているはずだった。

もう、すでにラグーソ市での仕事をやりとていた私は、市の誰も気づかれぬうやにラ

グーン市から脱出しなけれぽならない。

 

やがてラグーン市は死の町になるのだから。

 

街角から、銃を手にした人々、いやアンドロイドが出現した。それは間違いなく、私を

殺す目的を持ったアンドロイド達だ。

 

残念ながら、私にはこれを総て防ぐ方法は、なかった。アンドロイド達は町のあちこちか

ら現われてくる。増える一方なのだ。

 

私は杖をふりまわして、彼らから逃れようとした。

杖はまた一種の銃ともなる。光線が発射される。彼らは仲間が圖れても、それを踏み越えて襲ってくる。

 

私は再び杖につかまり、上空へ登った。

市の食糧庫の前に止まっている大きなトラックが目にはいった。私があらかじめ時間をセットして呼びよせているものだ。

 

センターから派遣されていた食糧運搬車の中に隠れ、脱出するつもりだった。

この時、私以外に、誰かが先に乗り込んでいようとは思いもよらなかった。

 

センターからは地球上のあらゆる都市へ食糧が送り込まれている。地球にわずかに残っ

た農耕地域を総てセンターが押えているのだ。

センターがこの地球すべてを食糧をもって支配するようになったのはかなり昔の話だ。

センターがどこにあるのか誰も知らなかった。

 

地球の運搬機関はわずかにビーグルだけだった。飛行機はセンター以外には所有してい

ない。

 

他に侵略者の円盤柵が地球で見る事のできる飛翔体である。

 

センターが存在する以前はこの地球は巨大な文明をほこっていた。

食糧運搬車は食糧を各都市にはきだしたあとすぐさまその市を立ち去る。後をつけら

れてセンターの場所を知られないためだ。

 

運転席には人影はない。センターのコンピューターと連動しているのだ。

食糧をはきだすハッチは全部で10個あるがいずれも人一人がはいりこめるに充分な大き

さだ。しかしそこから無理にはいりこもうとすれば、レイザー=ガソに焼き投される運命

にある。

 

私の体はレイザー=ガンのセンサーと同調されている。私はハッチの一つから潜り込み、

からっぽのタンクの中にはいれた。

ラグーン市の見張りに気がつかれなかった事をいのった。

 

自動操縦で食糧車は動き始めた。

ラグーン市の金色の壁の外へ出るまで、私は食糧タンクの中でじっとしていた。

市外へ出たと思われた時、タンクのボルトを杖で焼き切り、トラックの中央を走る通路

へ出た。運転席の方へ歩み出した。

 

運搬トラックは全長200mもある。車輪は20輪、チタン合金でまわりをかためてあり、ち

よっとした襲撃などにはピクともしない。おまけに重装備の武器がいたる所に隠されてい

るのだ。

 

人の気配がした。

補助タンクの影で動くものがあった。私は杖を構え。近づいていった。

少女だった。

傷ついて、意識を失しなっているようだ。

 

 

クリス/リックマンという名の箱船第6回

(1976年)「もり」発表作品20210824改稿

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/