yamada-kikaku’s blog(小説ブログ)

山田企画事務所のペンネーム飛鳥京香の小説ブログです。

遙かなる絆-ランナー第8回

遙かなる絆-ランナー第8回
(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html


 「俺が選ばれたランナーだって! 二十万キロを走る。何て莫迦なことを。俺はシャトルトレインの中で夢でも見ているのか?」
ヘルムは叫ぶ。
 「夢ではない。現実だ。ヘルム。お前が土星環戦役で生き残れたのも、私の助けがあったからだ」
 「俺が生き残れだのは、お前のおかげだと」
 ヘルムは顛の中の声に話しかけていた。
 「それなら、なぜサイボーグの体になったのだ。普通の体で、無傷でもよか、たのじゃないか。なぜな
んだ。それに何者だ、お前は」
 「私のことはどうでもいい。それより、ヘルム、お前のことを考えろ。お前は、サイボーグとなり、口
−ドランナーとなった。それで有名人の仲間入りかできたのだぞ。普通人のお前など、だれが見向きす
る。あのままでは下級市民のままだ。今頃は地下労働者として暮らしているに違いない」
 ヘルムは考えていた。確かに今の名声が得られたのは、彼がサイボーグだからだ。人間では不可能だ。
ヘルム=リッカート、下級市民。そうだ、もう未来は見えていたのだ。あの時点で。
「ヘルムさん、大丈夫かい」
 今度は別の声が聞こえてきた。子供の声だ。
「誰だ」
「あなたの目の前にいるよ。マニ導師が話されただろう。僕がマコトだよ」
 「マニヽ導師とは何者だ。ぃえっ、あのまさか、しかし、彼は死んだはずだ」
 「それは違う。彼の体は滅んだ。けれども彼の霊魂は存在している。ヘルムさん、先刻、マニ導師が話
されたように、僕を月まで辿れていってほしいんだ」
「が、助けを呼んだ方が早くはないか」
「誰が助けてくれるの」
「そりゃ、シャトル公社か誰かだ」
「だめだよ」
「なぜだ」
「すでに、僕達は、死の天使のテロリストとして手配されているだろうよ」
「何だって、。死の天使のテロリスト。なぜそんな事になるんだ」
「恐らく私がマニ導師の遺志をついだ人間だということは,EDOに知られているはずだ。しかもシャ
トルが爆破し、ここに、生き残っているのが私とあなたの二人だけだとすれば、なおのことEDOは考
えるに違いないんだ」
「そんな無茶な話があるか」
「そう、導師が仕組まれたはずです。我々はこのムーン=ウェイを走り抜けるより他に方法はないん
だ」
 「走り切るといっても、確か二十万キロといっていたな。俺のエネルギーが最後まで持つかどうか。それ

サムナーは作業・ステーションに準備された作業用ポッドを操縦し、次の作業ステーションヘ辿り着いていた。彼はそこでようやく足の長い作業用小型ロケ。トを見つけた。それて事故現場へ飛ぼうとする。
現在、地球は争乱状態に陥っている。地下に潜んでいた。死の天使‘の活動家運か、一斉に勤きはじめたのだ。あらゆる交通機関は停止状態にあった。
EDOもサムナーの方に助けを出すわけにはいかなかった。             
ムーン=ウェイで現在価いているのは定期点検をする作業用ロボットだけである。


  ヘルム・はマコトを背負って、一つのユニットを走り抜けていた。
 目の前には無限に続ぐ、通路がよごたわっている,が、まわりの光景などまったく目にはいらない。彼の走、る速度では目の前の一点しか見えてはいない。
 たった一人の戦いであった。
競走相手はいない。
しかも、外は宇宙空間なのだ。着地している下は虚空なのである。真空てあり、音も存在しないタ‘地上な.ら、、彼の走ったあとには恐るべき音と衝撃波がおこっているはずなのだが。
 ヘルムは自分の体が絶好調なのを喜んでいた。
この調子でいけば、簡単に二十万キロを走破できるかも
しれない?こればロードゲーム始ま・って以来の快挙となるだろう。
「ヘルムさん、次のユニ。トには空気が充満されている。その宇宙服を脱ぎすててもいいよ」
「ということはすぐ前に妨備壁がおりているということだな」
「あ、停まる必要はない。妨面壁に激突する瞬間に、僕がテレポートする」
 この時、まさに、ヘルムの足は天かける足であった。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html